計画研究
本計画の目的は、宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Backgound、以下CMB と略す)を広域に渡り精密観測し、加速宇宙の本質を実験物理学の立場から探求することである。特に、現代宇宙論最大の課題であるインフレーション宇宙仮説の検証をかつてない精度でおこなうことが主たる狙いである。インフレーションの最も重要な予言は、量子ゆらぎに起因した重力波(原始重力波)の生成である。原始重力波はCMB の直線偏光パターンに渦(B モード)を刻印したと考えられている。本研究ではこれを検証し、インフレーションの背後にある究極物理法則を実験・観測により検証する新時代を拓く。また、重力レンズ効果に起因するCMB 偏光度を観測し、ニュートリノや宇宙の暗黒成分などに関するユニークな情報を得ることも重要な目的である。期間内に地上観測結果を得るとともに将来の衛星観測の準備を進める。平成27年度は、初年度として研究の立ち上げを行った。Simons Arrayの観測周波数を決定するために、前景放射除去に関するシミュレーション研究を行った。特にPOLARBEAR-2(95, 150 GHz)ではカバーしていない220 GHz やさらに高い周波数が前景放射除去にどの程度有用かを明らかにし、その結果、260 GHz付近の観測も加えることとした。周波数を変えるには光学系の反射防止膜の開発が必要となる。従来の方法をさらに発展させて実現するための準備研究を行った。LiteBIRDに関しては、BBM設計の準備に着手した。0.1K での超伝導検出器性能評価が出来るLiteBIRD専用のシステム構築の準備を行った。さらに、前景放射除去と系統誤差に関するシミュレーション研究を進めて、δr < 0.001 を達成するための検出器の種類と周波数を定め、システム要求を最終決定するための検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
初年度の準備研究としては、予定した研究内容をほぼ達成した。
本計画研究は、1) 地上望遠鏡SimonS Array(以下SA)での観測、2) LiteBIRD 計画に代表される2020 年代の衛星観測の技術成熟度を高める開発研究、という二つの柱を持つ。SA は米国等との国際プロジェクトである。米国側は主鏡直径3.5mのファン・トラン望遠鏡(Huan Tran Telescope、HTT-1)のコピーを2 台(HTT-2、HTT-3)作る予算をSimons Foundation から得た。HTT-2 には科研費基盤(S)(H26-H30) により検出器(PB-2)を搭載し運用する。SA は、米国側がPB-2検出器のコピー(ただし観測周波数が異なる)を2 台作り、HTT-1とHTT-3 に搭載し、3 台で同時観測を行うプロジェクトである。その中で本計画研究は基盤(S) 研究でカバーしていないHTT-2/3 の観測周波数決定のためのシミュレーション、観測・運用、データ解析を守備範囲とし、前景放射分離に対して決定的な役割を果たす。LiteBIRD 計画は本計画研究代表者がワーキンググループ主査をつとめている。2020 年代の打ち上げを目指し、2015 年2 月にJAXA 宇宙科学研究所に対してミッション提案を提出した。米国等との国際プロジェクトである。米国LiteBIRD チームも、LiteBIRD への参加提案を2014 年12 月にNASA に提出した。CMB 偏光の全天精密観測と大角度ゆらぎ観測には必ず衛星が必要になる。そのための技術成熟度を高める研究は、個々のプロジェクト提案を超えて普遍的な価値がある。本計画研究の主眼はこの点にあり、観測成功の鍵を握る技術要素についてのブレッドボードモデル(BBM)の設計・開発・試験、誤差評価や観測方針決定のためのシミュレーションを範囲とする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 6件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 7件、 招待講演 10件) 図書 (1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Journal of Low Temperature Physics
巻: 184 ページ: 824~831
10.1007/s10909-016-1542-8
J. Low. Temp. Phys.
巻: 184, no.1-2 ページ: 512-518
10.1007/s10909-015-1448-x
巻: 184, no.3-4 ページ: 553-558
10.1007/s10909-015-1386-7
巻: 184, no.3-4 ページ: 805-810
10.1007/s10909-015-1425-4
JCAP
巻: 1602 no.02, 008 ページ: 1-52
10.1088/1475-7516/2016/02/008/
IEICE Trans Electron.
巻: 98-C ページ: 207-218
IEEE Trans. Terahertz Sci. Technol.
巻: 5(3) ページ: 456-463
10.1109/TTHZ.2015.2413751
J. Astron. Telesc. Instruments, Syst
巻: 1(2)/p.025001, 2015-02 ページ: 1-10
10.1117/12.2054846
IEEE Transanctions terahertz Sci. Technol.
巻: 5(1) ページ: 49-56
10.1109/TTHZ.2014.2367245
IEEE Trans. Appl. Supercond
巻: 25(3) ページ: 2400305 1~4
10.1109/TASC.2014.2364223
巻: 1(2) ページ: 25002-1~8
10.1117/1.JATIS.1.2.025002
Physical Review D
巻: 92 ページ: 123509-1~10
10.1103/PhysRevD.92.123509
Astrophysical Journal
巻: 809 ページ: 63-1~19
10.1088/0004-637X/809/1/63
http://cmb.kek.jp