研究領域 | なぜ宇宙は加速するのか? - 徹底的究明と将来への挑戦 - |
研究課題/領域番号 |
15H05891
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
羽澄 昌史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20263197)
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研究分担者 |
片山 伸彦 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (50290854)
長谷川 雅也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (60435617)
関本 裕太郎 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (70262152)
満田 和久 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (80183961)
石野 宏和 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90323782)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 人工衛星 / 宇宙のインフレーション / 宇宙マイクロ波背景放射 |
研究実績の概要 |
本計画の目的は、宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Backgound、以下CMB と略す)を広域に渡り精密観測し、加速宇宙の本質を実験物理学の立場から探求することである。特に、現代宇宙論最大の課題であるインフレーション宇宙仮説の検証をかつてない精度でおこなうことが主たる狙いである。インフレーションの最も重要な予言は、量子ゆらぎに起因した重力波(原始重力波)の生成である。原始重力波はCMB の直線偏光パターンに渦(B モード)を刻印したと考えられている。本研究ではこれを検証し、インフレーションの背後にある究極物理法則を実験・観測により検証する新時代を拓く。また、重力レンズ効果に起因するCMB 偏光度を観測し、ニュートリノや宇宙の暗黒成分などに関するユニークな情報を得ることも重要な目的である。期間内に地上観測結果を得るとともに将来の衛星観測の準備を進める。 Simons Arrayに関しては、三台の望遠鏡が設置され、受信機製作と試験も着実に進んでいる。前景放射除去のために当初予定の90, 150, 220GHzに加え、270GHzの観測も行う事を決定した。さらに、POLARBEAR実験で取得した偏光変調器を用いたデータの解析結果を発表し、数分角の分解能を持つ地上望遠鏡でインフレーションの検証に必要な広天域大角度観測が実現可能であることを世界で初めて示した。衛星観測の技術開発では、LiteBIRD衛星の要求分析・概念設計、光学系の設計、宇宙用偏光変調器の基礎開発、宇宙線の影響を緩和する新しい超伝導検出器デザインとその試験装置開発等を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Simons Arrayに関しては、米国側が担当する検出器の開発、および読み出しエレクトロニクスの開発に若干の遅れがみられるものの、日本側が本計画研究で担当する部分については、全般的に順調に進行しており、ほぼ当初に想定したものと同程度の達成度である。衛星観測の技術開発では、LiteBIRD衛星の要求分析・概念設計、光学系の設計、宇宙用偏光変調器の基礎開発、宇宙線の影響を緩和する新しい超伝導検出器デザインとその試験装置開発等が順調に進んでいる。以上から、全体に計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
主担当者のうち、研究分担者にはタスクに専念する研究員(計5 名)を配置し、ユニットとして共同で研究を進めていく。また、石野、片山、羽澄、満田が指導する大学院生(計15 名程度)も参加して修士論文、博士論文のテーマとしてこれらのタスクに従事する。カリフォルニア大学バークレー校(Adrian Lee 教授)、サンディエゴ校(Brian Keating 教授)を中心とした国際協力も併せて推進する。 計画研究としての目標(「研究目的」の項を参照)を達成することを基盤とし、それに加えて他の計画研究との連携による相乗効果を示す論文を生産していく。特にA01及びD01との連携を強化し、観測結果からインフレーション理論への制限を得る方法についての共同研究を今まで以上に強力に展開していく。領域全体シンポジウムを契機として、現在4つのサブプロジェクトが進行中であり、この程度の数を常に維持していく。 平成29年度には、SAによる初期観測を開始する。LiteBIRD衛星に関しては、前年度に引き続き機能実証モデル(BBM)設計を行い、開発を進める。光学系コンポーネント、読み出しエレクトロニクス、冷凍機制御システムについてこれを進めていく。そのための概念設計を進めていく。さらに、A01班やD01班との共同研究により、LiteBIRD衛星の観測でどのようなインフレーションモデルが制限できるか検討し、論文を発表する。 平成30年度~31年度には、SAで3台の望遠鏡による観測を本格化させ、初期観測結果を発表する。A01班、A02班、A03班、C01班、D01班と連携し、観測結果の宇宙論的な意義についてまとめる。さらに、LiteBIRD衛星の検討については、BBM開発を完了するとともに、本計画研究における検討結果をまとめた論文を発表する。
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