計画研究
平成27年度は、HSCによる広視野サーベイ観測を53晩行った。準備してきた画像解析プログラムを用いて平成28年1月末に当初の予定通り、約250名の共同研究者向けにデータリリースを行うことができた。波長帯域フィルターの5バンドで目標の深さまで撮像されている領域は150平方度あり、この段階で世界的にみても、ユニークなデータセットになっている。これにもとづき、おおむね一年をめどに、サーベイの初期成果をまとめることとしている。本計画研究では、サーベイデータ解析の効率化に取り組んできたが、平成27年度は以下のような成果を得た。(1)観測有効領域と天体検出率を管理し、それに基づく自己・相互相関の計算を実現し、銀河クラスタリング解析の大幅な効率化が達成された。(2) HSC画像解析による天体情報をデータベースに登録し、高速に検索できるシステムを構築し、これを用いて、150平方度に渡る広域ダークマター地図を作成できるようになった。(3) 測光的赤方偏移推定(Photo-z)の高精度化においては、ベイジアンpriorを用いる手法を開発し、縮退していたパラメーターを分離させ、outlier(大きな外れ値)を減らすことに成功した。これを、実際のデータ解析に適用し、共同研究者の利用に供した。一方、Photo-zの精度を向上させるために、追加校正装置の製作も進めている。具体的には、光源・分光器等を購入し、実験室において組み上げ、ほぼ完成した。実機を近々ハワイに送る予定である。さらに、新規開発要素としては、詳細ダークマター地図の作成を目指し、Lucky imagingの技術的可能性を検討しているが、今年度は大気のsimulationが一定の段階まで進めることができた。この過程で、現有の大気モデルの不定性が大きいことが分かり、マウナケアにおける大気状態を計測する方法の検討を始める必要性が認識された。
3: やや遅れている
HSCの観測・解析・データリリース等はほぼ当初予定通り順調に進んでいる。しかしながら、大気シミュレーションが、当初想定していた以上に計算機パワーを要することが分かり、予定より時間がかかっている。以上のことから総合的に判断して、進捗状況は「やや遅れている」とした。
大気シミュレーションを時間内に終わらせるために、新しい計算機の調達、もしくは共同利用計算機への申し込みを検討している。また、今年度はすばる望遠鏡に、追加校正装置を据え付け、Photo-zの高精度化を行う予定である。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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http://www.subarutelescope.org/Projects/HSC/j_index.html
http://hsc.mtk.nao.ac.jp/ssp