研究領域 | なぜ宇宙は加速するのか? - 徹底的究明と将来への挑戦 - |
研究課題/領域番号 |
15H05896
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小松 英一郎 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 主任研究員 (00750316)
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研究分担者 |
加用 一者 東京工科大学, 教養学環, 准教授 (80377928)
高橋 慶太郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (80547547)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 観測的宇宙論 / 宇宙の大規模構造 / 重力レンズ効果 / スニヤエフ-ゼルドビッチ効果 / intensity mapping / 21cm線 / ライマン・アルファ線 |
研究実績の概要 |
H30年度の目標は、これまでの研究で開発・実装してきた方法論とソフトウエアを用い、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)と銀河分布の相互相関の測定を行うこと(小松・真喜屋)、および重力レンズ効果と21cm輝線やライマン・アルファ(LyA)輝線分布のシミュレーションツールを拡張すること(加用・高橋・斎藤)であった。目標は全て達成され、それをはるかに上回る科学的成果が得られた。小松と真喜屋は、プランク衛星によって得られたCMBの熱的スニヤエフ-ゼルドビッチ(SZ)効果の全天マップと、2MASSサーベイから得られた銀河分布の全天マップとの相互相関を測定し、科学的解釈を世界で初めて与えた。小松はさらに、熱的SZ効果のパワースペクトルから暗黒エネルギーの状態方程式に新しい制限をつけると共に、B01の研究者と協力し、ライトバード計画から得られるCMBの偏光データを用いれば、原始重力波のパワースペクトルを再構築できることを示した。そのためには銀河系内の物質による放射を除去する必要があるので、前景放射除去の新しい方法論(デルタ・マップ法)を開発した。斎藤は、高解像度のLyA輝線分布のシミュレーションを用い、先行研究で指摘されていた、輝線銀河の相関関数が輻射輸送によって見かけ上歪められる効果は、以前のシミュレーションの解像度が足りないためであると結論した。高橋は、MWAから得られた既存の21cm輝線の実データとCMBとの相互相関の測定に伴う系統誤差を調べた。小松はさらに、将来的にSKAから得られる21cm輝線のマップとCMBとの相互相関、および21cm輝線のバイスペクトルを用いれば、宇宙の再電離の時期の物理に新たな制限を与えられることを示した。高橋は、再電離時期の21cm輝線とLyA輝線との相互相関を測定する際の方法論を詳しく調べた。これらの結果は全て、査読付きの学術誌に発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H30年度は、これまで積み上げてきた基礎的な研究の成果が大きく花開いた年度であった。特に、シミュレーションツールの開発・実装を超えて、実データの解析を行って論文を発表できたのは大きな成果である。宇宙マイクロ波背景放射(CMB)、銀河分布、21cm輝線、ライマン・アルファ輝線のデータの相互相関の測定は本研究の主要な目的である。前年度までは、予定通り銀河分布と重力レンズ効果との相互相関に集中していたが、今年度はそれを大きく超えて、CMB-銀河、CMB-21cm輝線、21cm-ライマン・アルファ輝線の相互相関の研究に取り組み、成果をあげることができた。研究は計画以上に進展し、新たな展開を見せている。
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今後の研究の推進方策 |
H31年度は、これまで開発してきた方法論・シミュレーションツールの実データへの適用をさらに推し進める。具体的には、CMBの熱的スニヤエフ-ゼルドビッチ効果と銀河分布の相互相関の測定を、2MASSだけでなく既存の全ての銀河カタログに対して行う(小松・真喜屋)。これにより、宇宙の熱的な圧力分布のトモグラフィー(時間発展の測定)が世界で初めて可能となる。そして、既存の21cm輝線とCMBのデータとの相互相関の測定を行い(高橋)、HETDEXサーベイから得られるライマン・アルファ輝線のデータと銀河分布との相互相関の測定を行う(斎藤)。重力レンズ効果に関しては、前年度までの対数正規分布シミュレーションツールの開発から見えてきた、数々の系統誤差を調べ上げてまとめ、論文として発表する(加用)。
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備考 |
CRLは、研究代表者と共同研究者とが開発したコンピュータープログラムを公表するページである。本科研費で開発したプログラムも、このページで全世界に公表している。
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