研究領域 | 脂質クオリティが解き明かす生命現象 |
研究課題/領域番号 |
15H05901
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡村 康司 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (80201987)
|
研究分担者 |
中川 敦史 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (20188890)
|
研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
|
キーワード | イオンチャネル / タンパク質ドメイン / 電位センサー |
研究実績の概要 |
1,電位依存性プロトンチャネルHv1:ダイマー内サブユニット間相互作用をFRETで解析する目的で、これまでアフリカツメガエル卵母細胞での発現が困難であったマウスHv1のN末端側に、アフリカツメガエル卵母細胞に多く発現させることが可能なCi-Hv1のN末端側細胞質配列をつけた分子を作成したところ、アフリカツメガエル卵母細胞で電位依存性プロトン電流が出現することを確認した。このコンストラクトを用いて、S3-S4リンカー部分にシステインの変異を導入し、Cy3とCy5の二重標識を行って全細胞からのFRET計測を試みたところ、Cy3とCy5間で(つまりプロトマー間で)FRETが効率よく生じることが明らかになった。リポソーム再構成系および培養細胞などを用いた1分子計測に必要な全反射照明蛍光顕微鏡のセットアップを行った。また、電位依存的な蛍光変化を観測するために電気生理計測用のアンプと取得装置を設置して、培養細胞から膜電位固定法による蛍光観察を試みた。 2,電位依存性ホスファターゼVSP:前年度明らかにされた新規の膜相互作用部位(以下hydrophobic spineと呼ぶ)に着目し、様々なアミノ酸への置換や、酵素内の様々な部位の構造変化の蛍光計測を行った。その結果、L284、F285ともに親水性アミノ酸への変異は電位依存的酵素活性を顕著に減弱させ、疎水性アミノ酸への変異は活性を維持することが判明した。更に芳香環をもつアミノ酸(Phe、Tyr、Trp)への変異は活性を増強することが明らかになった。中川・研究分担者は、昨年度から引き続き、基質との共結晶化を試みた。本年度は等温滴定型カロリメトリーを用いて各種リン脂質との結合定数を測定し、結晶化に適した安定な複合体の探索を行い,安定な複合体を中心に結晶化スクリーニングを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の解析において電位依存性プロトンチャネルHv1/VSOPへの不飽和脂肪酸の作用にはダイマー内プロトマー間の相互作用が重要であることが判明した。サブユニット間の相互作用を詳細に明らかにするため蛍光分子Cy3、Cy5をアミノ酸に導入して実験を行い、全細胞からのFRET計測が可能であることを確認した。中川・研究分担者とのVSPの基質との共結晶化については精製、結晶化ともに条件検討が十分に行われ、現在良い結晶が得られつつある。一方Hv1/VSOPとアラキドン酸との共結晶化は必ずしも容易ではないことから、X線結晶構造解析以外の解析法を検討していく必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
電位依存性プロトンチャネルHv1/VSOPについては、1分子FRETの計測系に向けて、蛍光分子ラベル部位の最適化を試みるとともに全反射蛍光顕微鏡での観察条件の検討を始める。また有田班から脂質ライブラリーの提供を受け、アラキドン酸以外の不飽和脂肪酸について電気生理学測定を行い、構造活性相関について明らかにしていく。また、NMRにより不飽和脂肪酸とHv1/VSOPとの直接相互作用を解析する目的で公募班員の大澤博士と連携してコンストラクトの検討を行う。 VSPについては、酵素内の様々な部位の構造変化を非天然蛍光アミノ酸であるAnapを用いて解析し、今回見出された新規膜相互作用部位がどのように電位依存性酵素活性を制御するのかを明らかにする。更にこの結果を、中川・研究分担者が進めるX線結晶構造の情報と対照し実験を再デザインしていく。
|