研究実績の概要 |
1)細胞内物質輸送など多様な現象に関与するホスファチジルイノシトール3,5-二燐酸(PtdIns(3,5)P2)の局在を急速凍結・凍結割断レプリカ標識電子顕微鏡法で解析するための方法を新たに開発した。プローブとして出芽酵母ATG18にGST, 4xFLAGのタグを付加したリコンビナント蛋白質を精製し、抗FLAG抗体、プロテインA標識金コロイドを用いて可視化した。上記プローブはホスファチジルイノシトール3燐酸(PtdIns3P)にも結合を示すが、過剰量のp40phoxのPXドメインを共存させてPtdIns3Pとの反応を抑制した。この方法を用いることにより、出芽酵母では高浸透圧処理した際に形成される液胞膜のラフト様ドメインにPtdIns(3,5)P2が集中すること、一方、哺乳類細胞ではにPtdIns(3,5)P2は管・小胞状構造を示すエンドソームの小胞部分に集まり、管状部分にはほとんど存在しないことなどを見出した。 2)BARタンパク質の中から、脂質膜への挿入部位を持つと推定されるタンパク質としてendophilinに注目した。BARドメインは、ダイマーとして機能するが、ほとんどのBARドメインと脂質膜の相互作用は、塩基性アミノ酸残基と酸性脂質の間の静電的な相互作用によっている。BARドメインの中でもendophilinは特に、その両端及び中央部に両親媒性部位を持つ。この両親媒性部位は、二重層からなる脂質膜の一層に挿入されることから、脂肪酸の多様性を認識できる可能性がある。本年度の研究では、様々な組織より抽出された脂質とendophilinの結合を調べたところ、脂質膜との結合や、結合の結果生じる脂質膜の形態の違いを見出した。また、ARDを含むタンパク質の中にも、脂質の組成により異なる結合を示すものを見出した。すなわち、endophilinやARDを含むタンパク質は、組織により異なるリポクオティの違いを認識できる可能性がある。
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