計画研究
1) 前年度に確立したホスファチジルセリン (PS) の分布をナノレベルで可視化するための電子顕微鏡法を用いて、哺乳類細胞と出芽酵母におけるPS分布を詳細に解析した。その結果、出芽酵母では小胞体膜、内外核膜に差がなく、いずれも膜の両葉にほぼ同レベルのPSがあるのに対し、哺乳類細胞では小胞体膜の細胞質側膜葉にほぼ限局して高レベルのPSがあり、その一方、内外核膜では両葉とも低レベルで非対称性はなかった。これらの結果は哺乳類細胞と出芽酵母のPS分布に差があることを示し、哺乳類細胞では連続する小胞体膜と核膜の間でPSの拡散を妨げる何らかの機構があることが示唆された。2) エンドフィリンの脂質膜切断に関して、エンドフィリンが高い切断活性を示す脂肪酸を同定した。さらに脂肪酸のちがいを認識するアミノ酸を、両親媒性部位のアミノ酸残基に変異を導入することで調べた。その結果、両親媒性ヘリックスのアミノ酸だけでなく、脂質膜とタンパク質の間の静電的相互作用を担うアミノ酸も重要であることがわかった。細胞突起形成に関わるBARタンパク質であるMTSS1は、両親媒性ヘリックスを持つことから、脂質膜の切断活性を検討したところ、脂質膜を切断することが示された。MTSS1が細胞において形成する細胞突起は、頻度が少ないものの、静的な培地中でも実際に切断され、さらに、培地の流れによって切断が増強されることがわかった。切断された小胞の有田班との共同研究による解析から、この切断はリゾリン脂質によって増強されることがわかった。ARDに関しては、ANKHD1の両親媒性ヘリックスに注目し、変異を導入し作用機序を調べた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画通りに進展しただけでなく、予期しなかった新たな発見も得られ、今後さらに大きな展開が期待できるため。
本年度に得られた成果をさらに発展させ、リポクオリティが生体膜、細胞全体に及ぼす影響の解析を一層加速させる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 9件) 備考 (2件)
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