計画研究
1)ホスファチジルセリン(PS)を解析するための凍結割断レプリカ標識法を確立した。この方法でマウス胎仔線維芽細胞(MEF)を調べたところ、従来の理解とは異なり、小胞体膜では細胞質側膜葉にPSが多く、内腔側膜葉には少ないことが明らかになった。一方、核膜ではPSは両膜葉にほぼ同程度に存在した。出芽酵母では小胞体膜、核膜とも両膜葉にPSが分布した。A23187をMEFに作用させると、小胞体膜の内腔側膜葉のPS増加とともに、核膜の非内腔側膜葉のPSが著しく増加した。TMEM16Kを欠損させたMEFでは、A23187による変化はほとんど見られなくなり、TMEM16Kを再導入すると回復した。これらの結果よりTMEM16Kがカルシウム依存性に活性化し、小胞体におけるPS分布を変化させることが明らかになった。2)エンドフィリンの脂質膜切断に関して、同定した脂肪酸が細胞の膜において含まれているかどうか、有田班との共同研究による質量分析解析により同定した。脂肪酸のちがいを認識するアミノ酸の作用機序を調べるために、X線小角散乱などにより変異がタンパク質の立体構造に与える影響を調べたところ、タンパク質の全体構造に変化は見られず、表面電荷が脂質膜へのタンパク質の挿入度を調節していることがわかった。細胞突起形成に関わるBARタンパク質であるMTSS1は、エンドフィリンに脂質膜を切断することが示されたので、アミノ酸に変異を導入し、切断機序を解析したところ、エンドフィリンとMTSS1の局在する膜曲率の違いを反映した機序を見出した。さらに、MTSSS1による細胞外小胞に含まれるリゾリン脂質が、実際にMTSS1による脂質膜の小胞化に寄与していることを試験管内で確かめた。ARDに関しては、ANKHD1の同定した脂質膜切断活性を変化させるアミノ酸残基の変異体の細胞機能における役割を調べた。
2: おおむね順調に進展している
ホスファチジルセリンの細胞内分布をナノレベルで解析する方法を確立し、その方法を用いることによってホスファチジルセリンの分布変化を引き起こす分子機構を解明することができた。
前年度に確立したホスファチジルセリンの解析方法を用いて、さらに詳細に生体膜での現象を解析する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件)
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