計画研究
自然免疫細胞の炎症シグナル伝達において、膜脂質マイクロドメインにおける脂質組成の重要性とその制御機構を理解することを目的として、脂質マイクロドメインの主構成成分であるスフィンゴ脂質に着目し、その脂質環境の撹乱による自然免疫細胞の機能変容について検討を行った。脂肪酸鎖長の異なるセラミド添加、および脂質代謝酵素の阻害剤を用いた結果、スフィンゴミエリンの代謝阻害によってTLR9を介した炎症応答が著しく亢進することを見出した。亢進した炎症応答は、スフィンゴミエリン代謝産物の添加によって抑制されたことから、TLR9に依存した炎症応答において、膜マイクロドメインにおけるスフィンゴミエリン代謝は負の制御に関わることが示唆された。スフィンゴミエリンの細胞内局在は、刺激非存在下では細胞内小胞に局在し、刺激依存的に細胞膜へと変化することから、細胞膜におけるスフィンゴミエリン代謝が炎症応答を負に制御する可能性が考えられた。また短鎖セラミド添加によってTLR9を介した炎症応答は修飾されることから、セラミドのリポクオリティ、またはセラミド代謝がTLR9シグナルの制御に関わることが示唆されたことから、D-erythro ceramideとL-erythro ceramideを用いてTLR9シグナルへの影響を解析した結果、D-erythro体のみでTLR9シグナルへの影響が認められたことから、セラミド代謝酵素による代謝産物がTLR9シグナルの媒介に重要であることが強く示唆された。有田班との共同研究により、TLR9刺激後のリピドミクス解析を行った結果、TLR9刺激によってスフィンゴミエリンの減少およびセラミドの増加が確認された。このことは上記in vitroにおけるTLR9シグナルにおけるスフィンゴ脂質の役割を支持する結果と考えられた。
3: やや遅れている
脂質ドメインの可視化において、時間経過を追った解析に遅延が生じている。その理由としては、蛍光標識した脂質プローブが結合することにより、生理的状況で起きていると考えられる脂質代謝が阻害され、膜動態が変化してしまうことで、正しい膜ドメインの挙動が解析できていないことが一つの原因と考えている。現在脂質プローブと標識脂質の追跡の両者で解析を進めている。
脂質プローブによる膜ドメイン可視化と平行して、標識脂質添加による膜ドメインのイメージングを試みる。またスフィンゴ脂質代謝阻害によるサイトカイン産生変動のメカニズムの解明と、スフィンゴ脂質撹乱が実際の免疫応答制御に応用可能かどうかを重点的に検討していく。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
臨床免疫アレルギー科
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