計画研究
反町らは自然免疫細胞の膜マイクロドメインの構築と機能を、好中球のケモタキシスに着目して解析を進めた。MHCクラスIとそのシス型C型レクチン受容体Ly49Qによって構築される膜ドメインが、SHIP1およびSHIP2の局在制御を担うことを見出した。興味深いことに、Ly49Qは好中球のケモタキシスの際にuropodへのSHIP2の集積を媒介し、これによりuropodの安定化を担っている可能性を見出した。また好中球の極性形成にはダイナミンに依存したエンドサイトーシスが方向決定に必要であることを見出した。分担者の田口らが開発した細胞毒性が極めて低いスフィンゴミエリン(SM)選択的プローブ(改変型equinatoxin-II)と種々の脂質プローブを用いてLy49Q 周辺膜脂質の脂質分子種および分布を解析した結果、Ly49QはSM、コレステロール、GM1が濃縮した膜ドメインを構築し、細胞表面のみならずエンドリソソームにおいてもこれら脂質によって構築される膜ドメインがLy49Q依存的に検出された。一次構造よりLy49Qの膜貫通領域近傍に脂質相互作用モチーフを見出し、これらの構造を介してスフィンゴ脂質と相互作用をしている可能性が強く示唆された。また分担者の田口らは、SM選択的プローブ(改変型equinatoxin-II)により細胞内のSMを可視化したところ、トランスゴルジネットワーク、リサイクリングエンドソーム、そしてリソソームなどのオルガネラの細胞質側脂質層にSMが存在していることを示唆するデータを得た。また、トランスゴルジネットワークに局在するSMは、活性化状態にある自然免疫分子STINGと非常に良く共局在することが明らかになった。これらを通じて、炎症を惹起する自然免疫センサーSITNGのシグナル伝達プラットフォームとして、ゴルジ体における膜脂質ドメインの機能的重要性を明らかにした。
3: やや遅れている
蛍光標識脂質プローブを用いて、炎症過程での膜脂質ドメインの動態の解析を試みているが、感度およびレーザーの連続照射による細胞死のため、測定ができていない。COS細胞、CHOといった細胞では可能な技術も、好中球、マクロファージなどのex vivo自然免疫細胞では条件設定に困難が生じている。
新規のスフィンゴミエリンプローブと既存の脂質プローブを組み合わせ、自然免疫細胞の炎症応答の際して特定の膜脂質の局在を、タイムラプスではなく時間経過を追った固定点での測定に切り替えて解析し、論文化を進めていく。質量分析では明らかにできない、細胞機能の発現における膜脂質の局在意義を、脂質局在を制御する膜タンパク質を操作することで明らかにしていく。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Sci Rep.
巻: 8 ページ: 10776
10.1038/s41598-018-29128-9
臨床免疫アレルギー科
巻: 69 ページ: 99-106
http://square.umin.ac.jp/Sori_Lab/