研究実績の概要 |
a) マクロファージM1/M2分化における脂肪酸の影響:ロイコトリエンB4受容体BLT1がM2マクロファージのみに発現し、VEGF放出を介して病的血管新生を促進していることを見いだした(JCI、リバイズ中)。ロイコトリエンB4や各種脂肪酸の刺激ではM1/M2分化に変化は生じなかった。また、マクロファージの長期培養によってアラキドン酸含有リン脂質が減少し、代わりにミード酸を含有するリン脂質が増加すること、これらの膜リン脂質の組成変化に応じて脂質メディエーターの産生プロファイルが変化することを見いだした(Okuno, JLR 2017)。 b) T細胞Th0/1/2/17分化における脂肪酸の影響: T細胞サブセットの間でリン脂質や中性脂質の脂肪酸長や不飽和度(リポクオリティ)に大きな違いが観察されたことから、これらの不飽和脂肪酸の含有量の変化がT細胞分化に与える影響を観察することとした。そのため、脂肪酸に二重結合を導入する酵素FADH2の遺伝子欠損マウスの作成に着手し、その作出に成功した。 c) ロイコトリエンB4受容体BLT1の結晶構造の解明:生理活性を有する脂肪酸であるロイコトリエンB4の高親和性受容体BLT1と拮抗薬BIIL260の共結晶構造の解明に成功した。BIIL260のベンザミジン基が、様々なGタンパク質共役型受容体に共通して観察されるナトリウムイオン-水の間のイオン結合を切断する事から、ベンザミジン基を有する化合物が多数のGタンパク質共役型受容体の拮抗薬や逆作動薬となる可能性を示した(Hori, Nat Chem Biol, 2018)
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