計画研究
本研究においては、リポクオリティを切り口としたヒト疾患の理解に臨床医(内科医・臨床検査医として矢冨、皮膚科医として本田)の視点・立場から取り組んでいる。矢冨グループの研究実績:(1)肝疾患とくに肝細胞癌:肝癌組織(非癌部を対照とした)におけるリゾリン脂質とエイコサノイドの一斉定量、さらには関連蛋白質(受容体・産生酵素)の発現解析を行い、不飽和LPAの肝癌進展への関与の可能性を明らかにしつつある。(2)胃癌腹膜播種におけるリゾホスファチジルセリンの関与の可能性を明らかにした。(3)東大病院麻酔科/整形外科/泌尿器科、東北大などとの共同研究により、脊柱管狭窄症患者(n = 57)と泌尿器科患者(コントロール,n = 19)の髄液検体をサンプリングし、リゾホスファチジン酸(LPA)関連分子の計測を酵素法(自動分析)さらには、質量分析により行った。LPA/LPC測定による痛みの有無の客観化、腰部脊柱管狭窄症の診断的検査への応用、LPCからLPAを産生するオートタキシンの阻害薬の治療への応用の可能性を明らかにした。本田グループの研究実績:マウスアトピー性皮膚炎モデルや乾癬モデルを用いて、炎症進展・制御に関与する脂質の同定とそのメカニズムを検討した。研究倫理委員会の承認の元、各種疾患の血液、組織(肝臓、皮膚など)を中心に検体収集を進めた。肝癌組織に関しては、平成28年度に領域内での共同研究が可能な状況になっている。また、アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患の血清・皮膚組織サンプルの収集も行った。今後、領域全体の臨床検体センターとしての役割を果たす素地を作ることができた。
2: おおむね順調に進展している
矢冨グループ:肝癌組織、脊柱管狭窄症患者の髄液検体を用いたリポクオリティ解析で、疾患の本質に迫ることができる結果を得ることができ、次年度以降の発展が期待できる。さらに、胃癌腹膜播種における解析においても、リゾホスファチジルセリンの関与の可能性を明らかにすることができ、発展が期待できる。本田グループ:肥満と乾癬の増悪の相関は広く知られている。肥満を誘発する高脂肪食は様々な病態で増悪因子としてしられているが、乾癬においても悪化因子となっていると仮説をたて、高脂肪食による乾癬の増悪メカニズムを検討した。その結果、病態促進的に作用する脂質(飽和脂肪酸)の新たな作用点を同定することができた。
矢冨グループ;これまでの検討からリゾリン脂質の質の関与が明らかとなった肝細胞癌、脊柱管狭窄症、胃癌腹膜播種の病態解明をリポクオリティの観点から深める。さらに、既に公表している急性冠症候群における血漿中の不飽和LPAの特異的上昇の病態生理学的意義の解明を領域内共同研究で進める。本田グループ:これまでの検討から、飽和脂肪酸は皮膚中の脂肪組織の機能を変化させ、炎症細胞の皮膚へのリクルートメントを促進し、炎症増悪因子としての作用をもつ可能性が示唆された。よって今後はそのメカニズムを細胞培養系を用いて、さらに詳細な検討を行う予定である。
東京大学医学部附属病院検査部ホームページhttp://lab-tky.umin.jp
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PLoS One
巻: 11 ページ: e0149462
10.1371/journal.pone.0149462
Allegology international
巻: 64 ページ: 11-16
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