研究領域 | がんシステムの新次元俯瞰と攻略 |
研究課題/領域番号 |
15H05908
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
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研究分担者 |
井上 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 講師 (50568326)
谷本 幸介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60611613)
村松 智輝 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (90732553) [辞退]
玄 泰行 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (80596156)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | がん / 細胞文脈 / オートファジー / マイクロRNA / 浸潤・転移 / 既存薬再配置 / 核酸創薬 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
個々で異なるがん細胞文脈のシステム的統合理解を図りその情報に基づきがん診断と治療の最適化方法を確立するための研究を推進した。具体的には、上皮間葉転換(EMT)、がん転移・浸潤性、オートファジー変調など種々の悪性特性を検証することができるがん細胞株モデルを確立した。加えて独自保有の23がん種446がん細胞株を対象に細胞文脈の構成別分類化を進めた。さらに、モデル細胞株や収集された症例検体のオミクス解析データ、機能的スクリーニングデータ、ならびにネットワーク解析から、がんの細胞文脈システム変化プロファイルを明らかにした。 その結果、がんの浸潤・転移を制御するハイプシン経路の分子機構を解明した。また、高転移口腔がん細胞株から放出されるエキソソームに包含されるマイクロRNA-1246を発見しDENND2Dを標的遺伝子にすることでがん細胞の移動・浸潤に関与する可能性を見出した。さらに、食道扁平上皮がんの網羅的DNAメチル化解析から、リンパ節転移予測DNAメチル化バイオマーカーや、核酸抗がん薬シーズとなるマイクロRNAの複数を同定した。また、がんオートファジー活性とその変調は病態形成に関与するだけでなく、がん創薬の標的として注目されている。急性リンパ性白血病(ALL)におけるL-アスパラギナーゼ(L-asp)投与時のオートファジー作用を解明し、L-asp治療にオートファジー阻害薬クロロキン(CQ)の併用が効果的であり、p53依存的に細胞死が惹起されることを明らかにした。その結果、p53変異の有無をコンパニオン診断に既存薬CQとL-asp併用治療法ドラッグリポジショニング効果を明らかにするとともにp53変異層別化による効果的な小児ALL治療法が期待される。 これらの研究成果は、比較的高いインパクトファクターの国際誌に12編の原著論文(うち責任著者論文7編)、2件の関連特許申請の成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の関連研究成果は比較的高いインパクトファクターの国際誌に12編の原著論文(うち責任著者論文7編)として発表され、2件の関連特許の申請が成された。
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今後の研究の推進方策 |
がんにおけるオートファジー機能の変調は細胞増殖と細胞死誘導の両面性が知られている。さらに、蛋白非コードの機能性マイクロRNA は数百もの標的遺伝子を持つことから、同一分子でありながら「がん遺伝子」あるいは「がん抑制遺伝子」としての振る舞いが知られている。同一でありながら相反する機能は、がん細胞の種類(cell type)や細胞文脈(cellular context)に依存して発揮される。細胞文脈はDNA、RNA、タンパク質、代謝物、器官、骨格などの細胞の部品や装置から形成された多階層にわたる分子ネットワークから成り立っている。今回の研究は、種々のがん細胞株やモデル動物ならびに臨床サンプルのオミクス解析によって得られた多階層分子ネットワークデータに基づいて、個々で異なるがん細胞文脈のシステム的統合理解を図りその情報に基づきがん診断と治療の最適化方法を確立するための研究を推進する。
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