計画研究
これまでにシステム生物学的解析を通じて探索・同定しMYMLRと名付けたlncRNAが、代表的ながん遺伝子MYCのプロモーターとエンハンサーを、PCBP2との結合を通じて近接化せしめ、MYC遺伝子の転写活性を維持することを明らかとし論文発表した (Kajino et al., EMBO J., 2019)。さらに昨年度にmiR-20aの標的lncRNAの探索を進める過程で、p53の発現抑制機能を持つことを見出しTILRと名付けたlncRNAに関して、その分子機構の解明を目指した検討を継続して進めた。その結果、TILRをノックダウンするとp53の代表的な標的遺伝子であるp21やMDM2が発現上昇すること、そしてこの発現上昇がp53のノックダウンによって抑制されることを見出した。p21のプロモーターを用いたluciferaseアッセイは、TILRのノックダウンによるp21のプロモーター活性の上昇が、p53結合領域の存在に必要とすることを示した。網羅的な遺伝子発現解析によるパスウェイ解析においてもTILRノックダウンの影響はp53経路に最も顕著であり、TILRがp53の発現制御を介してその活性を抑制していることが明らかとなった。さらに、ビオチン化TILRを用いた網羅的な結合タンパク質の探索を行い、TILR-binding protein 1 (TBP1)を同定するとともに、TILRとTBP1の結合について、in vitroの解析によって直接の結合を、また肺癌培養細胞を用いて内因性蛋白質間の結合をそれぞれ明らかにした。興味深いことに、TBP1をノックダウンしたところp53の発現が上昇し、またp21やMDM2の発現が著しく上昇したことから、TILRとTBP1の結合を通じた協調的なp53の発現抑制に関わる分子機構が存在することが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Oncogene
巻: 38 ページ: 5142-5157
org/10.1038/s41388-019-0785-7
EMBO J
巻: 38 ページ: e98441
org/10.15252/embj.201798441