研究領域 | 多様な質感認識の科学的解明と革新的質感技術の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H05921
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大澤 五住 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (20324824)
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研究分担者 |
佐々木 耕太 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (40467501)
田村 弘 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (80304038)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 神経科学 / 視覚 / 質感 / 大脳 / 神経生理学 / ディープラーニング / スパース推定 / 受容野 |
研究実績の概要 |
V1,V2,V4の腹側共同実験を実施した。自然画像を元にした刺激、画像統計量を体系的に操作した刺激、DRGW刺激、ランダムドット刺激を使った実験を行った。V1とV4野については32点のマルチ電極により、多数の細胞からの記録を行なった。多点電極からのデータの解析には、スパイクの分離を含む解析環境が必要だが、GPGPUを利用した解析システムが完成した。 スパースSTCによる、初期視覚野複雑型細胞がもつ線形フィルタの推定:より少量のスパイクデータから、スパースSpike-Triggered Covariance(STC)解析によりV1複雑型細胞の内部サブユニットを推定するための新解析法を開発した。この解析では、分散共分散行列を4次元の波でスパース推定する。周波数空間でのLASSOを用いることにより、通常のSTC解析と同程度のS/N比の分散共分散行列を推定するのに必要な刺激枚数を1/5から1/10程度に削減することができた。 質感情報表現ダイナミクスと画像選択的ユニットの物体認識における役割:第一の実験では、物体表面由来の視覚情報の神経表現が時間とともに変化するのかについて検討した。鎮痛不動化したサルV4野から、多数の自然物体表面画像に対する単一神経細胞活動を記録した。すべての刺激画像ペアに対する刺激画像間距離[神経RDM (representational dissimilarity matrix)]を求めた。また、画像特徴量(方位・空間周波数成分、輝度の分散など)から画像RDMを、意味差判別法により得られたスコアから心理RDMも求めた。画像RDMと神経RDM間および心理RDMと神経RDM間で相関を求めることで、神経細胞集団活動による表現と画像特徴量および心理評価値との比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究総括の大澤と分担者の佐々木のグループと分担者の田村のグループが共同し、V1,V2,V4野の視覚刺激に対する神経活動の記録実験を行い、計画に必要なデータの8割程度を取得した。多点記録データは、GPUによるスパイクソーティングが必要だが、今年度までの開発により、完成した。本研究で使用するダイナミックランダムガ ボール刺激やダイナミックランダムドット刺激が、多くのV4細胞にとっても有効な刺激であることを確認し、データを取得した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究開発により、共通の視覚刺激システムとデータ解析システムを完成し、多点電極によるデータの取得が順調に進行している。多点電極からのデータの解析には、スパイクの分離を含む解析環境が必要だが、この解析システムの準備も完了した。今後はこのシステムを活用し、研究計画のデータの最終部分を取得する。実験制御コンピューターと、集積されたデータを処理するための解析コンピューターをそれぞれの研究室で使用する。腹側・背側経路相互の情報伝達の様態を調べるために、MTとV4の同時記録実験の最終年度中の実験を目指す。 また、研究ではディープニューラルネットを実際の動物の脳と並行して研究することにより、両者を補完的に利用している。本研究のような 高次視覚野を扱う研究では、生理学的実験における記録時間の制限がない人工のディープニューラルネットは、実際の脳を考える上で有用である。本研究の主要なアプローチであるマイニング的手法が、ディープニューラルネットを取り入れることにより、さらに有効になるため、この 研究も推進する。 マイニング的なアプローチでは、実験時にはできるだけ仮定を置かない刺激を用いる反面、解析時には、脳内情報表現の種々の可能性につい て多様な方向からの理論的な考察が必要になる。そのため、Web会議システムにより、阪大(大澤・田村)と東大(岡田)を結んで、大学院生も含む全員参加でデータ解析や効果的な刺激の生成法について勉強会と打ち合わせを行う。
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