計画研究
本研究の目的は,実社会で活かす質感工学の実現のため,素材から知覚する質感を物理量-知覚特性-言語表現を基に解明し,質感データベースの構築を行うことである.そこで,平成29年度は,前年度までに得られた実験データを基に物理量-知覚特性-言語表現が表示できるDBの構築を行い,新規機能を追加した.質感データベース応用研究として,室内空間における雰囲気を考慮し,ユーザが要求する雰囲気に適した素材が提案できるシステムを構築した.また,日本語のオノマトペの音に質感が結びつくことを示した渡邊との研究成果が国際ジャーナルに掲載された.この日本語のオノマトペと質感の結びつきが,非日本語話者においては観察されるかについては十分解明されていないため,複数の地域(日本,イギリス,韓国など)において普遍的な質感の音象徴性を調査する実験を進めた.これまでの結果から,複数の国で共通して結び付けられる音と質感の組み合わせが発見された.また,絵画の色合いに対する選好には,「原画と同じ色合いを好む」という文化的な背景の違いを超えた普遍的な基準が存在すること,および絵画が持つ色彩統計量と選好との関係を明らかにした(Prof. Nascimento (University of Minho)との国際共同研究).渡邊とアウトリーチ活動として行っている「質感オノマトペマッププロジェクト」では,平成29年度は「布」と「酒」について,専門家へのヒアリングを行い,質感オノマトペマップの作成を行った.
2: おおむね順調に進展している
質感データベース構築については,新規機能としてオノマトペと音韻による検索に加え,素材カテゴリ別に絞り込むことができる検索機能を追加した.また,素材別の視覚印象評価実験を行い,視覚実験データの追加を行った.オノマトペの音象徴性については,複数の地域(日本,イギリス,韓国など)において,視覚・触覚から得る質感の情報がどのように音韻と結びつくか,それらの質感の音象徴性にはどのような違いや共通点があるかを検討する実験を行った結果,言語に依存しない質感の音象徴性がみられることが分かった.質感オノマトペマッププロジェクトについては,木・紙・布に続く第4弾の質感オノマトペプロジェクト冊子としてまとめた.さらに,領域内連携や国際共同研究も複数実施されており,全般的におおむね順調に進展していると思われる.
質感データベース構築については,新たな素材を収集し,物理量(表面形状・摩擦特性・硬度など)と知覚特性(視覚・聴覚・触覚),言語表現(オノマトペ)の関係性を解明・実装していく.さらに素材の画像化と新規機能の考案を進め,ウェブデータベースとしての機能を充実させる.構築された質感データベースの国際的な展開を図るため,中国・韓国・米国などの大学と連携し,質感の物理量と知覚特性,言語表現における共通点と相違点を検証していく.検証されたデータを基に国際的に通用するデータベースを考案し,構築していく.音象徴性のユニバーサリティについて,行動指標に基づいた新たな実験を実施し,文化・言語依存性について調査する.絵画に対する選好,材質識別に関しては生成系のニューラルネットワークを用いた手法を新たに導入する.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件) 図書 (4件) 産業財産権 (6件)
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