計画研究
平成28年度は、マルチマテリアル3Dプリンタ出力へのプロジェクションマッピングにより、実物体上での現実感高い質感表現を実現するための基盤技術の開発に注力した。代表者(岩井)は、昨年度に引き続き3Dプリンタより投影像位置合わせ用マーカーを同時印刷し、投影時にそれを視覚的に隠消する技術の研究を進め、拡張現実感分野の主要論文誌に採択された。また新たな試みとして、投影面とプロジェクタとの間に非球面透明層を埋め込んで投影光を非一様に屈折させることで、非平面投影時に生じる空間解像度低下を抑制する手法についても研究を進め、有効性を確認した。プロジェクションマッピング単体での質感提示についても研究を進めた。遮蔽による影を除去するため複数台投影を用いる手法について、分散協調最適化のアプローチを導入し、従来手法と比べ計算負荷を大幅に低減させることを可能とした(コンピュータグラフィックス分野の主要論文誌採択)。また、手へのテクスチャ投影により触質感を操作できることも明らかにした(和文論文誌採択)。さらに、光学シースルー型の拡張現実感とプロジェクションマッピングを組み合わせることにより、プロジェクションマッピング単体では実現できない高輝度かつ視点依存な質感提示を実現した。分担者(日浦)は、実測に基づく化粧品の反射と透過の高精度な再現に取り組み、塗布厚を変化させつつ撮影した画像群より、リップ塗布時の質感の高精度なシミュレーションを可能とする技術開発を行った。また、マルチマテリアル3Dプリンタで透過率および反射率を独立制御して、透過時と反射時で異なる視覚像を提示できる新たな質感表現技法の研究を進めた。さらに、当該3Dプリンタを専門に扱う研究員を雇用し、領域の他班からのリクエストに対して200を超えるプリンタ出力を行い、各班の研究を強力にバックアップした。
2: おおむね順調に進展している
本年度の交付申請書に記した研究実施計画がほぼ達成できたためである。以下に、計画にかかれていた各項目を進展度合いに分けて記載する。【当初の計画以上の進展】(1)マルチマテリアル3Dプリンタを専門に扱う研究員を雇用しスムーズに研究をすすめる体制を構築し、200を超えるプリンタ出力により他班も含め領域の研究活動をバックアップ。(2)プロジェクタ内部に光学系を組み込むプロジェクションマッピング技法を研究し、非平面投影時の解像度低下抑制効果を確認。(3)プロジェクションマッピングと光学シースルー型拡張現実感との組み合わせによる新たな質感提示技法を開発し、高輝度かつ視点依存な質感提示の有効性を確認。(4)隠消型マーカー埋め込みによるプロジェクションマッピング技術を評価した結果、主要学術誌に論文採択。(5)マルチマテリアル3Dプリンタの質感較正を行い、反射および透過を独立に制御する技術を確立。(6)主要学術雑誌、国内外会議での発表、および招待講演によるアウトリーチを行った。【やや遅れている】(1)プロジェクションマッピングの画質を向上させるために対象面テクスチャを用いる質感編集技法の開発は途上である。
研究員雇用により、マルチマテリアル3Dプリンタの活用が当初の予想以上に大幅に進展しており、次年度も引き続き同体制を維持しつつ、本研究課題および領域内の他班の活動をバックアップしていく。研究代表者は、未達成課題となっている投影対象面のテクスチャ・質感を用いることで高度な質感編集を可能とする技術の開発を進め、その有効性を明らかにすることに注力していく。また、国際支援班を活用し、国際共同研究をすすめることで研究活動を多元的に活発化させていく。研究分担者は引き続き質感較正技術の開発を進める。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
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