研究領域 | 多様な質感認識の科学的解明と革新的質感技術の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H05925
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩井 大輔 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90504837)
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研究分担者 |
日浦 慎作 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40314405)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | プロジェクションマッピング / デジタルファブリケーション / コンピュテーショナルフォトグラフィ / 質感 / 拡張現実感 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、研究代表者の研究実績が顕著であった。昨年度に引き続き、投影対象面のテクスチャ・質感を多自由度照明と組み合わせることで高度な質感編集を可能とする技術の開発を進めた。さらに、これまでプロジェクションマッピングに限られていた多自由度照明のバリエーションを増やし、多種多様なな質感表現編集の要望に応えられるよう研究を推進した。前者については、プロジェクション映像によって、柔軟物体の動きパターンを視覚的に操作し、柔らかさ印象を変調する技術が完成し、その有効性、技術的制約について調査を行った。この研究は、論文誌IEEE Transactions on Visualizatin and Computer Graphics (TVCG) に採択が決まり、バーチャルリアリティ分野のトップ会議であるIEEE VR 2019にて招待講演を行った。また後者については、空中像呈示の光学系であるMMAP素子をプロジェクタの大口径レンズと見立て、投影対象に人が触るようなインタラクティブな質感編集において問題となる影を光学的に発生しにくくする仕組みを提案し、学会等で積極的に展示を行った。この研究は、Innovative Technologies 2019に選抜され、さらに、IEEE VR 2019 Best Research Demonstration Runner-up Awardを受賞した。さらに、赤外線を任意方向に照射することのできる熱プロジェクタを構築し、プロジェクションマッピング時に温度情報も同時呈示できるシステム構築を行った。手のひらに投影された映像コンテンツに対して、どのように赤外光を照射すればその存在感が高まるのか、設計指針を明らかにした。この研究は、論文誌IEEE TVCGに掲載され、IEEE VR 2019にて招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載の通り、研究代表者が顕著な進捗を達成した。具体的には、本年度の交付申請書に記した研究実施計画が達成できたばかりでなく、複数のハイインパクト論文採択および受賞を果たした。分担者(日浦)に関しては、交付申請書に記載した「引き続き質感較正技術の開発を進める。特に、透過方向に応じて見えが切り替わる新たな質感提示技術を発展させ、これまでに進めてきた反射と透過を独立に制御する手法と併せて、マルチマテリアル3Dプリンタを用いた質感提示の可能性およびその限界について調査を深める。」の目的に対し順調に研究を進めており、次年度以降、学術論文等の発表を予定中である。 上記を統合して、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究課題の最終年度に当たるため、これまでに開発を進めてきた質感較正および質感表現編集技術を評価してまとめ、論文・学会発表等を通して広く世間に向けて成果を公表していく。また、昨年度までと同様、領域共有資産のマルチマテリアル3Dプリンタの利活用を促進すべく、本研究課題および領域内の他班からの印刷リクエストにスムーズに応える体制を維持し、それぞれの活動をバックアップしていく。 研究代表者(岩井)は、現在研究の最終段階にある次の各技術の評価を実施し、論文・学会発表を積極的に行う。各技術とはすなわち、(1) マルチマテリアル3Dプリンタを用いて光ファイバー内蔵の実物体を出力し、プロジェクションマッピングにおける映像の位置合わせに利用する技術、(2) 非平面に映像投影する際の投影像の幾何学的な歪みを、カスタム設計しデジタルファブリケーション出力した光学系により補正する技術、(3) プロジェクションマッピング以外の多自由度照明を用いた鏡面物体の質感変調技術の3点である。また、昨年と同様、国際支援班を活用して国際共同研究を進展させ、多元的な研究成果を達成する。さらに、プロジェクションマッピングによる質感編集技術の産業界への移転を進める。 研究分担者(日浦)は、現在研究の最終段階にある、透過方向に応じて見えが切り替わる質感提示技術、および、反射と透過を独立に制御する手法を評価し、適切に質感較正されたマルチマテリアル3Dプリンタを用いた質感提示の可能性およびその限界を明らかにするとともに、その成果の発表を行っていく。また、コンピュテーショナルフォトグラフィ技術を用いた化粧品の光沢の解析等、産業界への研究成果移転も進める。 さらに、代表者・分担者ともに、複数の招待講演等の機会を活かしたアウトリーチ活動にも積極的に取り組み、研究成果の社会還元を更に進めていく。
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