平成31年度は、実施目標としていた次の技術について成果が得られた。まず、マルチマテリアル3Dプリンタを用いて光ファイバー内蔵の実物体を出力し、プロジェクションマッピングにおける映像の位置合わせに利用する技術について、代表者が数式モデル考案・システム実装を行い、分担者が3Dプリントを担当する体制で研究を進めた。その結果、バーチャルリアリティ研究分野で権威ある国際会議IEEE VRにて口頭発表に選抜され、論文誌IEEE Transactions on Visualizatin and Computer Graphics (TVCG) に採択された。次に、鏡面物体の質感変調技術については、研究代表者のグループが中心となり研究を進め、鏡面をマットな質感に変調できることを実験により確認した。この成果は、拡張現実感分野で主要な国際会議であるIEEE International Symposium on Mixed and Augmented Reality (ISMAR)にて選抜され口頭発表を行った。
国際支援班を活用した国際共同研究の進展も顕著であった。MIT CSAILとの共同研究では、食品3Dプリンタを用いて、クッキー咀嚼時の食質感を制御し、満腹感を操作できる可能性を示した。この研究は、人とコンピュータとの相互作用に関する権威ある国際会議であるACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems 2020の口頭発表に選抜されている。また、領域総括班が主催した国際シンポジウムに招待したIST AustriaのBernd Bickel教授と議論を深め、新たな質感ディスプレイのコンセプトを考案するに至った。研究期間の制約上、具体的な実験を実施することはできなかったが、今後、この議論をベースに研究を進展させる予定である。
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