研究領域 | 多様な質感認識の科学的解明と革新的質感技術の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H05926
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
岡嶋 克典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60377108)
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研究分担者 |
堀内 隆彦 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30272181)
富永 昌二 長野大学, 企業情報学部, 研究員 (10103342)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 感性情報学 / 心理物理学 / 色彩工学 / 分光解析 / マルチモーダル情報処理 |
研究実績の概要 |
光沢および陰影の検出フィルタの出力値から、光沢感を予測できるモデル式を導出した。内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の明るさへの寄与率の個人差が大きいことを明らかにし、質感の個人差の原因が部分的にipRGCの寄与率で説明できる可能性を示した。AR(拡張現実感)によるクロスモーダル効果を応用し、食品の見た目の質感を変えることで減塩化が可能であることを実験的に示した。プロジェクションマッピングの画質を物体モードに近づける手法について検討し、入出力ならびに内部計算をXYZ測色値で制御するプロジェクションマッピングシステムを開発した。タブレットを用いてカメラの測色値と不均一性を瞬時にキャリブレーション可能な電子色票を作成し、カメラ・プロジェクションシステムのキャリブレーションを効率化する手法を提案した。ロボットアームと2次元分光放射計を用いた2次元BRDF測定装置も開発した。 天井照明を含めた自然環境において、実物体と再現画像の質感知覚の違いを実験的に検討した。プロジェクションによる実物体の金属色再現システムを構築し、各金属色の知覚条件を心理物理実験により決定した。また印刷において質感を保持することを目的とした誤差拡散法の提案を行い、産業界において実証実験を開始した。星像のプラネタリウムにおける質感再現に関しても、産業界と連携して心理物理実験を実施し、要因を解析した。 また、ゴニオメーターに頼らずにBRDFを測定する装置として、イメージベースの計測方法を開発した。One shotで異なった入射角と観測角での反射特性が推定でき、ゴニオメーターと比較し手法の詳細な評価を行なった。蛍光物体についても、異なる照明下での蛍光物体の見えを再現する手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した光沢および陰影の検出フィルタの出力値から光沢感を直接予測できるモデル式を導出し、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の明るさへの寄与率の個人差が大きいことを示すとともに、ARによるクロスモーダル効果を応用して食品の減塩化を実現したが、それぞれの解析・改良を現時点でも進めている。また、プロジェクションマッピングの画質を物体モードに近づける手法について検討し、入出力ならびに内部計算をXYZ測色値で制御するプロジェクションマッピングシステムを開発した。これらの詳細な解析ならびにシステムの改良は継続中である。ロボットアームと2次元分光放射計を用いた2次元BRDF測定装置も開発し、タブレットを用いてカメラの測色値と不均一性を瞬時にキャリブレーション可能な電子色票を作成したが、今後は実用化を目指す。天井照明を含めた自然環境において、実物体と再現画像の質感知覚の違いを検討し、プロジェクションによる実物体の金属色再現システムを構築して各金属色の知覚条件を心理物理実験により決定したが、詳細な解析を現在も進めている。また印刷において質感を保持することを目的とした誤差拡散法の提案を行うとともに、星像のプラネタリウムにおける質感再現に関して、産業界と連携して心理物理実験を実施し、要因を解析した。これらの実用化も検討中である。さらに、ゴニオメーターに頼らずにBRDFを測定する装置として、イメージベースの計測方法を開発し、ゴニオメーターと比較し手法の詳細な評価を行なった。蛍光物体についても、異なる照明下での蛍光物体の見えを再現する手法を確立したが、さらなる改良も進めているところである。以上のように、質感工学の構築に向け、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
質感工学の構築に向けて、これまでの研究成果を統合・融合し、さらに拡張する。ロボットアームを用いた2次元BRDF計測に加えて、その後の解析過程までを自動化させ、実用的な多角的質感情報収集・解析システムを開発する。光沢検出ならびに陰影検出フィルタを用いた実用的な解析システムを開発するとともに、刺激画像の各成分の測色値分布と様々な質感認知の関係を定式化し、質感自動認識ならびに画像上での変調を行えるシステムを開発する。また、他班とも共同で質感の標準化を推進するとともに、質感工学に関するレシピの体系化を試みる。マルチモーダル効果を定量化し、実用的な実験ならびに応用システムを開発する。表示系デバイスに依存する質感管理技術を構築し、実用的なシステム開発を進める。また、異なる照明光源下における質感知覚の定量化も行うとともに、瞳孔径変化に着目した実用的な質感編集システムを開発する。ipRGCを考慮した蛍光感推定システムを開発し、ディスプレイによる忠実な蛍光感再現を実現する。 また、優れた質感を有する蛍光物体の効率的かつ実用的な計測方法を確立するとともに、蛍光分光解析技術と蛍光相互照明現象のモデル化を完成させ、任意の蛍光素材を任意の照明条件でそれらの見えを再構築可能な質感管理システムを開発する。金属や不均質誘電体のように強い光沢を有する反射物体の簡便な計測と解析法も確立し、任意条件下で見えを再現するシステムを開発する。
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