計画研究
様々な動物細胞が環境温の変動に応答してミトコンドリアを始めとするエネルギー代謝機構を代償的に変化させることが知られている。しかし、個々の細胞がどのようにして細胞内の温度を感知し、ミトコンドリアのエネルギー代謝レベルを変化させているのか依然不明である。我々は温度変化の影響を強く受ける生体膜の流動性の調節機構に着目し、この機構に重要な役割を果たす脂肪酸不飽和化酵素が細胞内の温度センシングおよび温度制御に深く関わることを見出し、研究を進めている。これまでの研究により、1)Δ9脂肪酸不飽和化酵素DESAT1が生体膜の流動性に応じて発現制御を受けること、さらにDESAT1のN末端di-prolineモチーフ依存的に分解制御を受けることを明らかにし、2)DESAT1の特異的阻害剤や遺伝子欠損によりミトコンドリアが断片化し膜電位が低下することから、DESAT1が細胞内エネルギー代謝制御に重要な役割を果たすこと、3)DESAT1がミトコンドリア内膜構造の維持およびATP合成酵素の複合体形成の制御に関わること、4) 低温暴露によりミトコンドリアの伸長及び膜電位の上昇がDESAT1依存的に起きることを明らかにした。本年度、DESAT1がミトコンドリア機能を制御する機構をより詳細に解析するために、細胞内小器官の分画によりDESAT1の細胞内局在を詳細に解析したところ、小胞体に局在するとされるDESAT1が小胞体画分のみならず粗ミトコンドリア画分にも強く検出されることを明らかにした。また、細胞内局在の観察によってもDESAT1はミトコンドリアに近接した局在を示すことを見出した。これらの結果から、低温暴露時に対してDESAT1によるF1F0-ATPaseの制御依存的にミトコンドリア呼吸が亢進することが示された。さらに、DESAT1は小胞体とミトコンドリアのコンタクトサイトに局在することによりミトコンドリアに効率よく不飽和脂肪酸を供給し、ミトコンドリア機能に強く影響を与えていると考えられた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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