現在、地球温暖化に伴う生物種の大量絶滅、生息域の変化、感染症の拡大への対処が焦眉の課題として問われている。従来、環境温の変化が生命活動にいかなる影響を及ぼすかについての学術領域は、主に生態学や動物行動学をはじめとするマクロ生物学を軸として進められている。一方、現代の分子生物学の発展により生命活動を分子レベルで理解する基礎が築かれてきているが、生命活動に及ぼす温度の影響を分子レベルで体系的に理解する試みは未だわずかである。本研究では、細胞にも、動物と同様に、環境温の変動に応じて自律的に細胞内温度を制御する仕組みが存在すること、さらにその分子機構の一端を明らかにした点にその学術的意義がある。
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