研究実績の概要 |
1. 研究代表者は、心理や情動が体温調節を含めた多様な生体調節系に作用し、ストレス反応などの生理反応を生み出す現象を担う脳の神経回路の解析を進めた。その結果、心身相関現象の解明につながる重要な知見を得た。また、昨年度に引き続き、研究分担者の山田と研究代表者が共同研究を行い、マウスの肝臓におけるインスリン作用の低下が、交感神経活性の減弱による褐色脂肪組織の熱産生(=エネルギー消費)の低下を引き起こし、体重増加の要因となることを見出した。 2. 研究代表者は、米国・オレゴン健康科学大学のDr. Shaun Morrisonとの国際共同研究を進め、これまでの体温調節機構に関する研究成果を共著総説にまとめた。この国際共著総説は、生理学分野で世界的に注目される総説誌であるAnnual Review of Physiology誌に掲載された(Morrison & Nakamura, Annu. Rev. Physiol. 81:285-308, 2019)。 3. 研究代表者は、平成28年度に国際共同研究によって、視床下部が飢餓を感知して脳内で生み出される飢餓信号が、代謝(熱産生)を抑制するとともに摂食を促進する上で鍵となる延髄の神経細胞を発見し、査読付き英文国際誌に論文発表した(Nakamura et al., Cell Metab. 25:322-334, 2017)。今年度は、この発見に関連し、研究代表者が責任著者となって、脳が飢餓や飽食を感知し、適切な生体反応を発現させる神経回路のモデルを国際英文誌に発表した(Nakamura & Nakamura, BioEssays 40:1700252, 2018)。 4. 研究代表者は、昨年度に引き続き、体温のセットポイント決定機構を解明するため、ラット体温調節中枢の体温調節ニューロンの組織化学的解析を行った。
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