計画研究
宇宙の微小重力下で長期滞在することは、体の重量を支える力が要らなくなるため急速に廃用性の萎縮が進み、宇宙飛行士の骨や筋が著しく低下することが良く知られている。また、培養細胞を用いた宇宙実験においても、μGと1G環境下では遺伝子の発現レベルにおいて大きな違いが生じることも報告されてきた。私たちは、’04、’09年に宇宙実験を実施する機会を得て、わずか1,000個の体細胞からなる小さな線虫Cエレガンスにおいても、宇宙の微小重力下で育てると筋、代謝、細胞骨格関連のタンパク質、ならびに遺伝子の発現が有意に低下することを再現性良く見出してきた。従って、重力は個々の細胞レベルに影響し、発達・成長に大きな変化を与えることが強く示唆された。一方で、重力の力学的感知から適応応答、破綻に至るシグナル伝達カスケードの全貌は未解明であり、宇宙での長期滞在のみならず、高齢化に伴い益々増加するロコモティブ症候群の対策においても重要な鍵となる。そこで本研究では、’15年1月と4月の二度にわたり実施することができた線虫の宇宙実験サンプル、ならびに地上での培養条件、寒天上での表面張力、液体中での静水圧変化、遠心加重力などを付加したサンプル群を用いて、線虫は、どのようなメカノセンサー分子ならびに神経細胞系を介して力学的変化を感知して、筋、代謝変化へと適応応答するのか、分子遺伝学的かつ網羅的なオミクス解析により解明した。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度であるが、成果を取り纏めることができ、npj Microbiology誌に2編の論文を発表することができ、研究が進展した。
各種神経細胞の破壊株を分与いただき、新たな共同研究をすすめている。また、加圧という物理的なメカノストレスに対する応答についても、A01-1成瀬班との共同研究を通して、今後、進める。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
npj Microgravity
巻: 2 ページ: 16006
doi:10.1038/npjmgrav.2016.6
巻: 2 ページ: 15022
doi:10.1038/npjmgrav.2015.22