研究領域 | 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
15H05937
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
東谷 篤志 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (40212162)
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研究分担者 |
東端 晃 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 主任研究開発員 (30360720)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | Cエレガンス / 筋 / ストレス / メカノ / 重力 / 宇宙実験 |
研究実績の概要 |
1.「培養環境の変化に伴う体長の制御に関する解析」:これまでの宇宙実験の結果から、線虫の体長は、微小重力下で成育させることにより筋タンパク質の発現量が低下に伴い短くなることを見出した。そこで、今回、μGを模擬した3Dクリノスタット下で培養したところ、宇宙での応答と同様に、体長が短く変化することを新たに見出した。また、培養環境を寒天上の固相表面から液体中に変えることでも体長が変化し(原著論文1, 2)、いずれの場合も、TGFβ/DBL-1を介した神経筋シグナル伝達経路が関与することを明らかにした。さらに、それら環境変化に応答した体長の変動には、運動神経で発現しているアドレナリン作動性受容体DOP-4も関与することを見出した(国際学会発表1)。
2.「ミトコンドリア障害から筋委縮に至る機構の解析」:加齢や各種ストレスに伴うミトコンドリア障害から筋委縮に至るメカニズムについて、今年度は、特に、筋細胞におけるCa2+の漏出から生じるミトコンドリアの断片化について調べてきた。線虫の体壁筋細胞においては、様々なストレスに応答してCa2+の漏出が生じることを見出してきた。また、この漏出は筋小胞体膜にあるリアノジン受容体を通して生じることを、阻害剤ならびにリアノジン受容体UNC-68欠損変異体を用いた遺伝学的な実験により証明した。さらに、Ca2+の漏出が筋細胞のミトコンドリアの断片化を進めること、そして最終的には筋原線維の崩壊へと導くことを明らかにした。また、筋原線維の崩壊において、筋細胞のECM分解が引き金となることも見出した。これら一連のミトコンドリア障害から筋細胞の崩壊に至るメカニズムのより詳細な制御機構について引き続き解明し、さらに、筋委縮を抑制する方策についても検討して行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙実験に関わる研究成果の論文発表ならびに地上での運動負荷効果に関する制御機構の論文をそれぞれ発表することができた。また、次につながるCaの過剰蓄積から筋細胞の崩壊に至る分子ネットワークの解明を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
線虫の体壁筋のミトコンドリアにおけるCa2+の恒常性をモニタリングする系の構築も手掛けている。また、ECM分解に関わる酵素の阻害剤などを用いた実験も検討し、遺伝学的な実験データをより強固なものにする試みを進めている。これらの新たな実験系を用いて、より詳細に神経から筋・代謝へのメカノストレス伝達と適応応答機構について研究を展開する。また、他の計画班、公募班との共同研究も、積極的に進める。
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