計画研究
現代はグローバル化による24時間型社会であり、多くの人々が厳しい環境とストレスにさらされて恒常性に異常をきたし、睡眠障害やリズム障害に苦しんでいる。国際宇宙ステーション(ISS)に居住する宇宙飛行士も、極端に短い日周期や閉鎖環境、過密スケジュール等の厳しい条件にさらされており、ISS環境は現代ストレス社会の究極と捉えることができる。本研究では新規睡眠覚醒制御手法を開発してISS環境における睡眠問題の解決を図る。さらに、この研究成果を地上で応用・展開することにより、現代ストレス社会・高齢化社会の睡眠問題の解決を目指す。本年度は、1「ISSでも使える睡眠診断法の研究:睡眠計測のための脳波解析を自動化するためのアルゴリズム・ソフトウェアの開発」、2「宇宙飛行士が安心して使える不眠症治療薬の提供:オレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの服用が健常成人男性の身体・認知機能に及ぼす影響の検討」3「睡眠制御への薬理学的介入の基礎研究」について、計画に沿って検討を進めることができた。さらには次年度に共同で実施を計画しているJAXAにおける閉鎖環境試験について、他の研究班と密に連絡を取って計画を作成することができた。
2: おおむね順調に進展している
1.「ISSでも使える睡眠診断法の研究:睡眠計測のための脳波解析を自動化するためのアルゴリズム・ソフトウェアの開発」:マウスから取得された脳波および筋電図を用いた睡眠ステージの自動判定のためのアルゴリズム・ソフトウェアの開発を行い、Sunagawaらにより2013年に提案されたFASTERと呼ばれる睡眠ステージ判定アルゴリズムの改善を題材に、先行技術よりも高精度なアルゴリズムの開発に取り組んだ。2.「宇宙飛行士が安心して使える不眠症治療薬の提供:オレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの服用が健常成人男性の身体・認知機能に及ぼす影響の検討」:成人健常男性を対象に、夜間就寝前のオレキシン受容体拮抗薬の服用が強制覚醒後の身体・認知機能に及ぼす影響について、従来薬と比較検討するためのプロトコールを作成した。3.1「睡眠制御への薬理学的介入の基礎研究:睡眠覚醒制御遺伝子Sleepyを含むパスウェー制御の検討」:新規睡眠覚醒制御分子Sleepyを中心としたパスウェー制御の検討に必須な、遺伝子改変マウスおよび複数の抗体を作製した。作製したFLAG-Sleepyマウスは健康で、睡眠覚醒も野生型と変化なく、FLAG抗体で認識されるFLAG-Sleepy融合蛋白質が確かに脳内で作られていることを確認した。また、Sleepy蛋白質の機能解析を目的に、Sleepy蛋白質のリン酸化特異的抗体、野生型Sleepy蛋白質特異的抗体、変異型Sleepy蛋白質特異的抗体を作製した。3.2「睡眠制御への薬理学的介入の基礎研究:オレキシン受容体作動薬の選択性の違いによる薬理作用の基礎検討」:κオピオイド選択的作動薬であるナルフラフィンにOX1R拮抗活性があることを見出した(IC50 = 421 nM)。その後、ナルフラフィンをリード化合物として、オピオイド活性を示さず、OX1Rに対して200倍以上拮抗活性が向上し、OX2Rに対して10,000倍以上の選択性を有する化合物の創製に成功した。
1.「ISSでも使える睡眠診断法の研究:睡眠計測のための脳波解析を自動化するためのアルゴリズム・ソフトウェアの開発」:本年度は、先行技術FASTERの性能を詳細に分析するとともに、時系列情報を考慮した提案技術exFASTERを開発することで93.41%という比較的高い判定精度を達成するソフトウェアを実現した。今後は、睡眠ステージ自動判定の更なる高精度化を目指す。2.「宇宙飛行士が安心して使える不眠症治療薬の提供:オレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの服用が健常成人男性の身体・認知機能に及ぼす影響の検討」:計画に基づいてパイロットスタディー、および被験者数を増やした本試験を行い、オレキシン受容体拮抗薬が身体・認知機能に及ぼす影響について、従来薬と比較検討する。また、強制覚醒後だけでなく、翌朝の自然覚醒後についても、オレキシン受容体拮抗薬が身体・認知機能に与える影響を検討する。3.1「睡眠制御への薬理学的介入の基礎研究:睡眠覚醒制御遺伝子Sleepyを含むパスウェー制御の検討」:今後は、FLAG-Sleepyマウスを用いて、Sleepy蛋白質の機能解析やその結合分子の同定解析を進めていく。さらに、顕著な覚醒時間の短縮を示す変異型SleepyにFLAGタグを付加した遺伝子改変マウスも作製予定である。3.2「睡眠制御への薬理学的介入の基礎研究:オレキシン受容体作動薬の選択性の違いによる薬理作用の基礎検討」:これまでにOX1R選択的拮抗薬の他に、OX2R選択的作動薬YNT-185も見出しており、今後はこれらの探索過程において得られた構造活性相関情報を基に、作動活性と拮抗活性をスイッチする構造因子の特定に努め、世界初のOX1R選択的作動薬の創製を行なう。また、見出した選択的リガンドを用いて、REM睡眠、NREM睡眠および覚醒のそれぞれのステージにOX1Rが与える影響を詳細に解析し、OX1Rの睡眠覚醒サイクル制御における役割、特に睡眠の質に与える影響を明らかにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 11件、 査読あり 20件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
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