研究領域 | 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
15H05943
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
古川 聡 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 上席研究開発員 (20726260)
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研究分担者 |
大島 博 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 主幹研究開発員 (00213702)
村井 正 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 参事 (10748958)
緒方 克彦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 総括研究開発員 (40748985)
鈴木 豪 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 主任医長 (50649035)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙 / 無重力 / 閉鎖環境 / ストレス / ストレスマーカ― |
研究実績の概要 |
長期宇宙滞在においては、無重力の影響に加えて複数のクルーが宇宙船という閉鎖空間で長期間仕事や生活を共にすることで肉体的にも精神的にも多大なストレスが生じる。一方、ストレスに対する自覚症状とダメージの程度が異なるケースも多く、最終的な破綻に至る期間の個人差も大きい。従って、ダメージを客観的に評価し、可逆的な段階で対策を講じることが不可欠である。本研究では、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の閉鎖環境適応訓練設備を用いて、閉鎖ストレスによるダメージを客観的かつ定量的に評価できるストレスマーカーを探索する。 閉鎖ストレス負荷により経時的に変化する唾液や血液中の生体物質から、ストレスマーカー候補を選別するため、被験者を2週間、閉鎖環境適応訓練設備内に居住させ、宇宙飛行を想定した密なスケジュールでの模擬科学実験、故障対応などの負荷を加え、それらの前後における変化を調べた。 H29年度は、計画研究である[A02]松崎、[A03]那須らと共に、統合閉鎖試験を1回(通算5回目)実施した。 第2・3回試験において閉鎖設備滞在1日前と滞在14日目に採取した全血サンプル(N=15)より抽出したRNAについてDNAマイクロアレイ解析を実施した結果、2週間の閉鎖設備滞在に伴い、発現量が変化した遺伝子を確認した。これら遺伝子の発現変化についてIngenuity Pathway Analysisにより生物学的影響を検討した。 第2回試験での唾液サンプルについてショットガン解析を実施し、閉鎖設備滞在により発現が変化したタンパク質を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な研究計画調整、倫理審査委員会での承認等の段階を経て、他の班を統括しながら、2週間の閉鎖試験を実施した。また、唾液や血液のDNAマイクロアレイ解析等により、閉鎖ストレスマーカー候補を探索した。以上より、現状おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、全血サンプルのDNAマイクロアレイ解析により、閉鎖設備滞在に伴い発現量が変化することが示唆された遺伝子について、RT-PCR法によるmRNA発現量解析を実施し、新規ストレスマーカー候補を探索する。 唾液サンプルのショットガン解析結果から絞り込んだストレスマーカー候補については、他検体における発現量をウェスタンブロッティング法により評価する。 またJAXA閉鎖設備を用いた閉鎖試験を、[A02]松崎、[A03]那須らと共同で1回実施する。その際、当班が統括する。 ストレスに対し顕在化する生体現象(レジリアンス(復活力)、適応(可塑性)、破綻)との相関を整理し、生体へのストレス評価に役立てる。
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