研究領域 | 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
15H05945
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高橋 昭久 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 教授 (60275336)
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研究分担者 |
日出間 純 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (20250855)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙放射線 / 太陽紫外線 / 微小重力 / 複合影響 / 免疫 / がんの進行 |
研究実績の概要 |
1.疑似微小重力環境における放射線同時照射による研究:ヒト正常線維芽細胞を用い、3Dクリノスタット炭素線同時照射装置によるサンプルにつき、公募班 (沢野先生)の協力の下、Fucciシステムによる細胞周期の解析を実施中。 さらに、海外研究者 (Dr. Hada M)の協力の下、染色体異常解析をすすめ、X線に比べて炭素線は染色体異常頻度が高く、いずれの放射線でも静置に比べてクリノスタットでの照射は染色体異常頻度が高くなることを見出した。 2.疑似微小重力環境における紫外線同時照射による研究:宇宙環境における紫外線の高線量率環境、そして微小重力環境との複合環境が植物の生育に及ぼす影響の解析をすすめている。UVB感受性を示す変異体シロイヌナズナ種子をクリノスタット上で回転させながら発芽させ、14日目の幼植物に、UVBを一過的に照射し、再びクリノスタット上で育成させた。UVB+μG区では、UVB+1G区と比較して、葉は白色化し、より感受性を示している結果となった。μGでは、UVBにより葉緑体には大きな変化は認められないものの、ミトコンドリアの障害 (断片化)が顕著に起こっていることを見出した。 3.疑似微小重力環境における「がんの進行」に関する研究:微小重力環境を模擬した尾部懸垂マウスでは、免疫系器官が萎縮し、腫瘍の増殖が亢進する先行研究がある(Lee et al, 2005)。そこで、これまでの再検証と、新たなチャレンジとして、肺転移についても評価するとともに、尾部懸垂の一時接地が防護策と成り得るのかを検討した。その結果、尾部懸垂により、肺転移数の増加も確認でき、がんは進行することを再確認できた。さらに、1日2時間の一時接地で、がんの進行は抑えられることから、宇宙でのがん死リスク防護策の一つとなる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の成果を基に、 ①地球上では再現不可能な地上と同じ1Gと宇宙空間のμGとの間の可変重力 (特に、月と火星を想定して、1/6G、1/3G)と紫外線・放射線の複合影響を明らかにすることを目的に、宇宙実験の実施を目指して、装置開発を行い、国際宇宙ステーション実験のフィジビリティースタディに申請している。これらの知見に基づき、いかにどこまで宇宙放射線の被曝を軽減することが必要かを提案したことが採択された。 ②「宇宙でガンの進行は早まるのか?」「それを防ぐことができるのか?」を明らかにすることを目的に、国際宇宙ステーション実験のフィジビリティースタディに提案したことが採択された。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画した装置作製も計画通り完了し、これら装置を利用して炭素線・X線・紫外線影響の解析をすすめている。また、組換え生物作製も計画通りである。これらを利用して、遺伝子発現解析、細胞レベルでの突然変異・染色体異常・ゲノム不安定性を、個体レベルで形態異常・機能変化等をエンドポイントとして、疑似微小重力環境における放射線・紫外線照射による生物応答の解析を行う。各班との共同研究を推進する。 現在実施している植物の微小重力+高紫外線の複合影響では、紫外線照射は1G環境で短時間の照射のみである。宇宙環境を想定した複合環境影響を解析するためには、クリノスタット上で栽培しながら同時に紫外線等が照射できる装置が必要不可欠である。そこで、本年度紫外線を含む太陽光を模擬した人工LED光源ユニットを作製し、クリノスタットに搭載し、クリノスタット上で紫外線照射が可能な装置を作製した。今後は、これまでに作製した紫外線・放射線影響検出マーカー導入植物、変異誘発が可視化できる組換え体植物、細胞内のオルガネラの動態が可視化できる組換え体植物を本装置に搭載し、長期間栽培することで、微小重力環境が植物の紫外線影響に及ぼす影響を解析することで、微小重力+紫外線の複合環境が植物の生育に及ぼす影響を分子、細胞、個体レベルで解析する必要がある。
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