計画研究
平成28年度においては、「超解像イメージング」および「ストレスイメージング」に対する機能性蛍光プローブの開発に注力して研究を進めた。1.自発的な光明滅を繰り返す超解像イメージングプローブの開発分子内スピロ環化平衡や分子間求核付加反応を蛍光明滅原理として用いることで、自発的な光明滅を繰り返す超解像イメージングプローブの多色化ならびに、明滅特性の拡張を目指した。特に、細胞内求核分子と蛍光団との分子間求核付加反応を光明滅原理として見出した赤色・緑色の候補蛍光団の光明滅特性をin vitroで評価した結果、生理的条件下において数ミリ秒の蛍光性状態の平均寿命を示し、高速での二色超解像イメージングプローブとして利用できる可能性が示された。また、これらの色素をラベル化した抗体を用い、固定細胞において同時二色超解像イメージング画像の取得が可能であることも示した。2.ストレスイメージングに資する蛍光プローブの開発細胞内の主たる抗酸化物質であるグルタチオンと蛍光団との間の分子間求核付加反応を利用することで、生細胞におけるグルタチオンの濃度変動を繰り返しかつ定量的に測定可能なプローブを開発した。具体的には、キサンテン系色素9位炭素へのグルタチオン求核付加反応とそれに伴う可視光領域の吸収・蛍光の消失を蛍光制御原理として利用することで、生理的グルタチオン濃度の範囲内において吸収特性・蛍光特性がグルタチオン濃度依存的かつ可逆的に変化するプローブを開発した。また、これまでに開発した、生きた組織中におけるlacZ発現細胞を1細胞レベルで蛍光染色可能な蛍光プローブの分子設計に則り、lacZ発現細胞でのみ光増感能を回復するactivatable光増感剤を設計・合成した。
2: おおむね順調に進展している
細胞内求核分子と蛍光団との分子間求核付加反応を活用することで新たに開発した自発的な光明滅を示す色素は、外部からチオールや脱酸素剤などを添加する必要がなく、また強い励起光照射を必要としないため、生理的条件下で複数の標的蛋白質を多色かつ超解像度で観察することが可能になると期待される。同時に、我々の研究グループでこれまでに開発したブリンキング色素と比較して、十倍程度速い光明滅速度を示すため、高速でのライブセル超解像イメージングプローブとして利用できる可能性が示された。また、生細胞におけるグルタチオンの濃度変動を繰り返しかつ定量的に測定可能なプローブは、従来までのプローブでは達成出来なかった可逆性・定量性を実現出来、今後様々な系での適用が期待される。これらの成果は当初目標としていた平成28年度の計画に沿った成果であったため、上記の評価とした。
1.自発的な光明滅を繰り返す超解像イメージングプローブの開発細胞内求核分子と蛍光団との分子間求核付加反応を光明滅原理として開発した赤色および緑色の候補蛍光団の生細胞応用を目指し、これらの蛍光団にタグ蛋白質の基質部位や標的蛋白へのリガンドを導入した誘導体を合成、開発する。さらに、標的蛋白とタグ蛋白の融合蛋白を発現する細胞に適用することで、細胞膜透過性、ラベル化率、特異性などを評価し、生細胞への適用可能性を精査する。必要に応じて分子修飾を施すことで、高速での超解像イメージングに適したプローブ開発を目指す。このような検討により、高速かつライブセルでの多色超解像イメージングに資する分子の開発を目指す。さらに、タグ蛋白質との反応後に初めてブリンキング機能が回復する分子に関しても、消光団やリンカー部位の最適化を行い、タグ蛋白質との反応性や溶解性を改善することで、Off-targetを低減した自発的な光明滅を繰り返す超解像イメージングプローブを開発する。2.ストレスイメージングに資する蛍光プローブの開発これまでに開発したグルタチオン濃度変動を可逆的かつ定量的に測定可能なプローブに化学修飾を施すことで、細胞内局在が異なる誘導体やin vivo応用に適した特性を有するプローブへと構造展開する。さらに、光照射による分子間求核付加反応の非平衡化現象を活用し、酸化ストレスに関連する細胞内生体分子の濃度変動を繰り返しかつ定量的に測定可能なプローブの開発も合わせて検討する。また、これまでに開発した標的細胞でのみ機能を回復するactivatable光増感剤のin vitroでの光増感能・反応性の評価、培養細胞での機能評価を行い、標的細胞でのみ酸化ストレスを与え得るか、またその時空間分解能について評価する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件) 産業財産権 (3件)
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