研究領域 | 共鳴誘導で革新するバイオイメージング |
研究課題/領域番号 |
15H05952
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
今村 健志 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (70264421)
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研究分担者 |
出口 友則 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (30415715)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | バイオテクノロジー / 癌 / 遺伝子 / タンパク質 / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
革新的生体イメージング技術とがんモデルメダカを開発し、がん転移メカニズム解析と創薬スクリーニングに応用することを目的に研究を進めた。具体的には、新規光シート型顕微鏡の機器開発として、深部到達能の向上、光毒性・退色防止および高解像度を実現するため、2光子励起蛍光の原理を応用した 「2光子Dual-Digital Scanned Light-sheet Microscopy (DSLM)」の光学系を構築した。先行研究において従来のチタンサファイアレーザー光源を用いると充分な光子エネルギーが得られないために視野が非常に狭くなってしまう欠点が指摘されているので、まず光源を2分割して両サイドから励起する方法を選択した。さらに、液晶アクティブ光学素子の応用については、実際に球面収差に関する補償光学系を2光子励起顕微鏡に装着し、蛍光を発現するがん細胞の移植がんモデルマウスを用いて、そのスペックの検討を行った。(担当今村)一方、がんモデルメダカの開発として、ヒトがん細胞移植メダカについてはTALENを用いて、メダカのSCID及びXSCID遺伝子に突然変異を誘発した免疫不全メダカを作製し、genotypingによって遺伝子導入が確認できたので、ウロコ移植実験によってそれぞれの単独での免疫不全を検討した。また、膵臓特異的にヒトのがん遺伝子と蛍光タンパク質を強制発現させることで蛍光標識された膵がんを発症する遺伝子導入メダカ系統の開発については、コンストラクトを作製し、これをメダカの受精卵にマイクロインジェクションし、次世代を蛍光実体顕微鏡でスクリーニングすることでトランスジェニック系統の樹立を進めた。(担当出口)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
革新的生体イメージング技術とがんモデルメダカを開発し、がん転移メカニズム解析と創薬スクリーニングに応用することを目的にした研究は、おおむね順調に進展している。具体的には、機器開発として、2光子励起蛍光の原理を応用し、超短パルスレーザー光源を2分割して両サイドから励起する方法を用いた2光子Dual-DSLM)の光学系の構築を完了し、2次元画像を取得することができ、基盤整備は順調に進んでいる。また、液晶アクティブ光学素子については、実際に、球面収差を補正する液晶デバイス補償光学素子を2光子励起顕微鏡に装着し、マウスに移植した蛍光発現がん細胞を用いて、補正効果の検討をおこなった今後、さらにサンプルを至適化しながら検討を続ける。(担当今村)一方、革新的なメダカがんモデルとして、ヒトがん細胞移植メダカと膵がんモデルメダカの開発は順調に進んだ。具体的には、ヒトがん細胞移植メダカについては、TALENを用いてメダカのSCID及びXSCID遺伝子に突然変異を誘発した免疫不全メダカを作製し、genotypingによる遺伝子導入の確認が完了し、次に、SCIDとXSCIDを掛け合わせたダブル変異メダカを作製に進む予定である。さらに、蛍光標識された膵がんを発症する遺伝子導入メダカ系統の開発については、膵臓特異的に発現する遺伝子であるインシュリンプロモーターの下流にloxPで挟んだ終始コドンとヒトの活性型がん遺伝子(H-Ras(G12V))を繋げ、さらにその下流に2Aペプチドで蛍光タンパク質の遺伝子をつなげたコンストラクトを作製し、これをメダカの受精卵にマイクロインジェクションし、次世代を蛍光実体顕微鏡でスクリーニングすることでトランスジェニック系統の樹立を行った。作製したメダカにおけるgenotypingによる遺伝子導入と蛍光発現の確認を完了した。(担当出口)
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今後の研究の推進方策 |
革新的生体イメージング技術とがんモデルメダカを開発し、がん転移メカニズム解析と創薬スクリーニングに応用する家代を引き続き進める。具体的には、新規光シート型顕微鏡の開発として、液晶アクティブ光学素子が創るラゲールガウスビームなどの構造化照明法を駆使し、メダカ全体という広範囲において、照明ムラなく30フレーム/秒を越える高速の3次元画像構築を実現する光シート型顕微鏡を開発するために、光学系を駆逐した「2光子Dual-Digital Scanned Light-sheet Microscopy (DSLM)」について、深部到達能の向上、光毒性・退色防止および高解像度を実現するための改良を進め、そのスペックをpoint spread function (PSF)などの具体的な指標で検討を行う。さらに、3次元画像の取得のためのシステム構築を行う。液晶アクティブ光学素子の応用については、引き続き、実際に球面収差に関する補償光学系を2光子励起顕微鏡に装着し、球面収差のあるサンプルでスペックの検討を行う。(担当今村)一方、がんモデルメダカの開発として、ヒトがん細胞移植メダカについては、SCIDメダカとXSCIDメダカを掛け合わせたダブル変異メダカを作製し、このメダカに蛍光標識したヒトがん細胞を移植することで、ヒトがん細胞の生体内動態を光学的に詳しく観察することができるモデルメダカを開発する。また、膵臓特異的にヒトのがん遺伝子と蛍光タンパク質を強制発現させることで蛍光標識された膵がんを発症する遺伝子導入メダカについては、熱ショック応答プロモーターの制御化でCreリコンビナーゼを発現するTG系統と組み合わせることで、熱ショックを与えた後に発がんするように系を確立する。(担当出口)
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