研究領域 | 共鳴誘導で革新するバイオイメージング |
研究課題/領域番号 |
15H05953
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
根本 知己 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (50291084)
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研究分担者 |
佐藤 俊一 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30162431)
川上 良介 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (40508818)
大友 康平 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (40547204)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 2光子顕微鏡 / バイオイメージング / 開口放出 / Ca2+シグナル / ベクトルビーム |
研究実績の概要 |
初年度である本年度は、マルチビームスキャン型多光子顕微鏡装置に空間光変調器を導入し、レーザー光をベクトル化するための、光学系の構築を実施した。またベクトルビームの技術に基づきレーザー強度分布の成形に取り組むことで画質の改善を推進するのと共に開口放出現象の可視化解析を推進した。特に、以下の点を中心に研究を推進した。マルチビーム型レーザースキャナーに対して新規高出力近赤外超短パルスも対を導入するための光学系の設計を実施した。さらに、これら光学系の実装により、倒立型および正立型のマルチビーム型の多光子顕微鏡の構築を実施した。また、マウス脳の光学的な特性について、領域依存的な屈折率分布の存在などの新たな知見を得ることに成功した。これにより、マルチビーム型多光子顕微鏡の収差の改善によるレーザー集光特性を向上させ、空間分解能と深部到達性を向上させる可能性がでてきた。またベクトルビームの自己治癒効果を活用した深部到達性の向上について検討した。ベクトルビームを用いた分子配向イメージングの基盤となる、対物レンズの焦点で軸性(伝搬)方向に偏光したビームを発生に成功した。同様に、ベクトリビームの技術を活用することでトップハットビームが発生可能であることが実証でき、試料面を広視野でかつ均質に照明することが可能となった。また、構築中の倒立型マルチビーム型多光子顕微鏡に加えて、Ca2+インジケータを発現する遺伝子改変マウスや有機小分子系のCa2+指示薬を用いて、高速のCa2+イメージングの可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
生命科学現象の可視化解析のためには、生きたままの生体組織に対して、非侵襲的かつ高速の断層イメージングが必要である。本年度は、マルチレンズアレイを用いたマルチビーム型レーザースキャナーの高速性と多光子顕微鏡の非侵襲性との両立が可能であることを示すことができた。Ca2+依存性の開口放出の高速の3Dイメージングに成功し、Ca2+波動の発生伝搬や単一のΩ構造の発生などの様子を高い時空間分解能で捉えることができた。さらに加えて、ベクトルビームの特性を活用することで、広視野化や分子配向の可視化への方途を開くことにも成功した。特に前者は知的財産として成立する可能性も出て来ており、期待する以上に進捗が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では引き続き、ベクトルビームを活用したマルチビームスキャン型多光子顕微鏡装置の導入・構築を行う。またTDE法により透明化マウス固定脳に対してマルチビームスキャン型多光子顕微鏡装固有の収差、視差等の解析をさらに進めると共に、マウス生体脳の透明化技術、開口放出現象の可視化解析を推進する。 1.昨年度、設計し導入を開始したマルチビーム型レーザースキャナーと導光系に対して、新規レーザー光を導入し、新たに正立型のマルチビーム型2光子顕微鏡装置の完成度を上げる。これによりオープンスカル法等でのマウス生体脳イメージングへの適用可能性の検討を開始する。また、生体脳の光学的な特性について得られた知見を活用し、マルチビーム型多光子顕微鏡に固有の収差を改善し、レーザー集光特性を向上させ、空間分解能と深部到達性の向上を図る。また引き続きベクトルビームの自己治癒効果を活用した深部到達性の向上について検討する。 2.昨年度はベクトルビームを用いた分子配向イメージングの基盤となる、対物レンズの焦点で軸性(伝搬)方向に偏光したビームを発生に成功したので、その生組織への適応可能性を検討する。ベクトルビームを活用した新たな超解像顕微鏡の手法に関する理論的な計算・シミュレーションと実証実験を実施する。スピニングディスク超解像顕微鏡の検討を開始する。 3.昨年度はベクトルビームの技術を活用しトップハットバームの形成の可能性を実証することができたため、これをマルチビーム型レーザースキャナーに導入する超短光パルスレーザーに導入し、広視野・高速の2光子イメージングを可能とする。さらにCa2+インジケータを発現する遺伝子改変マウスや有機小分子系のCa2+指示薬を用いることで、ex vivoやin vivoでの細胞内Ca2+動態やCa2+依存性開口放出機能の可視化解析に適用する。
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