研究領域 | 共鳴誘導で革新するバイオイメージング |
研究課題/領域番号 |
15H05954
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
横田 秀夫 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, チームリーダー (00261206)
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研究分担者 |
竹本 智子 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 研究員 (00450403)
吉澤 信 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 上級研究員 (10455371)
世良 俊博 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40373526)
森田 正彦 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 特別研究員 (40449038)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ディジタル画像処理 / 画像認識 / 画像処理 / 画像データベース / 画像計測 / 生体画像処理 / 細胞内画像処理 / バイオイメージインフォマティクス |
研究実績の概要 |
現状の画像情報処理技術では、本新学術領域での新規的・独創的技術から得られる新しい画像データの適切な管理・処理が困難である 。本計画研究班では、共鳴誘導で革新するバイオイメージングのための新しい画像情報処理技術の研究・開発を目的とする。新規イメージング技術から得られた画像データを統一的に管理・処理するクラウド型データベース、画像処理基盤 システム、及び画像処理アルゴリズムの研究を実施し、領域内外に公開する。これは、日本発の先端画像処理技術と革新的アルゴリズムに基づき、量的・質的に従来とは大きく異なる画像を一括して管理・処理・解析しようとする独創的な試みである。 本年度の具体的な研究実績は、以下である。画像処理アルゴリズム:特徴保存画像平滑化フィルタの高速かつ高精度なアルゴリズムの考案と実装。細胞集団移動解析、sommelierシステムの改良と生物試料解析、大規模固定試料の画像解析による動態解析。画像処理基盤システム:独自の画像処理統合システムVCAT5の拡張として、画像処理の履歴を記述する機能の実装、各種フィルタなどの個別処理プラグインをGUIにて編集するマクロシステムを開発した。 さらに、多次元画像をデータベースとして一元管理すると共に、上記VCAT5をクライアントサーバー型のシステムとして解析可能とするクラウドシステムRBICPの公開利用を開始した。 本新学術領域は大学、研究機関など多様な組織からなり、またその所在地も日本全国に散在する。これらの参加者がインターネット上で利用できるシステムを開発した。さらに、領域内の研究者の研究を共振(レゾナンス)するための取り組みとして、画像データベースの設計と上記画像処理システムRBICPを開発した。また、領域外の研究者との共鳴を目指し て、画像処理のアルゴリズムコンテストを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に実施した解析結果を踏まえて、領域全体として下記3つの項目 の情報処理技術を研究開発した。 1:画像処理基礎アルゴリズムの研究: 高速フィルタ:Kazan大学と高速かつ高精度にガウス畳み込みを行う新しい計算法を考案し、画像のエッジ保存平滑化と細部強調を高速かつ高品質に実行するフィルタを開発した。細胞集団移動解析:細胞集団の移動を観察時系列画像群からオプティカルフローを用いて定量化した。画像処理システム研究開発:細胞観察画像を対象として画像処理性能評価システムsommelierを用いた検討を実施した。CLSMからの時系列画像群から細胞膜構造を自動領域分割する手法を開発した。固定試料に対する大規模解析による動態解析:タイムラプス観察が不可能な対象に多数の固定試料の解析からの動態解析を実現した。数千枚の免疫染色した核膜孔複合体の前駆体観察画像から、核膜孔が存在しない領域を自動認識し、細胞周期進行阻害剤による変化をシミュレーションとの比較により制御機構の可能性を示した。 2:情報 処理基盤システム・データベースの研究: 画像処理プラットフォームVCAT5の処理履歴の記述言語の設計と実装、及びそのネットワー ク利用としてRBICPの開発と領域内での公開利用を開始した。また、利用促進の為の講習会を2回開催した。 3:画像処理ソフトウェア作成コンテスト: 新しい学術領域としての普及推進を図るため、画像処理コンテストの企画・推進を行い、 精密工学会主催第17回外観検査アルゴリズムコンテスト共催した。エントリー数は145名であり、上位3名は細胞生物画像と関連がない分野の者であった。主催者や画像処理関係者からの高い評価から、2018年度第18回外観検査アルゴリズムコンテストも本領域との共催とすることとなった。さらに、コンテスト上位入賞作品の購入を行い、RBICPへの組み込み作業を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに研究開発したシステムを本研究領域内に展開する。具体的には、画像処理クラウドシステムRBICPを領域内において利用開始し、生命科学の研究者のデータの収集、画像処理システムの利用、画像処理結果の収集を行う予定である。また、共通する問題に対する画像処理アルゴリズムの研究開発を進めると共に、共同研究としての応用研究も実施する。さらに、領域内の研究者から提供される画像データを元に公開利用できるデータベースについて設計と研究開発を実施する。このように、抽象化を経て個別対象への特化を行う情報学のアプローチにより、領域内の画像データに対する統一的な管理・解析法の確立を目指す。また、公募班が研究開発している画像処理ソフトウエアをいただいており、2018年度にRBICPへの組み込みを行い、領域内での公開利用を計画している。このように領域内での研究交流を促進する予定である。さらに、画像処理コンテストの実行及び関連学協会とのシンポジウム・研究会の共催を通じて、生物学・光学・化学・情報学の融合を促進することで、本新学術領域の構築を目指す予定である。
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