計画研究
植物の環境応答のモデル細胞である気孔孔辺細胞を主な材料に、未解明の部分の多い植物の環境応答のシグナル伝達に関わる新奇因子とその作用機作、さらに、様々な環境刺激に応答した気孔孔辺細胞や茎長分裂組織におけるクロマチン修飾による環境記憶システムの解析を進め、気孔開度制御や花成制御における環境記憶の生理的意義を明らかにする。また、土壌の栄養状態や環境ストレスによる気孔開度制御の長距離シグナル伝達システムの解析を進め、これらの研究を通じて、植物の自律分散型環境応答統御システムの解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
1)「気孔開口の青色光シグナル伝達の解析」気孔開口の青色光シグナル伝達の解明を目的として、青色光による細胞膜H+-ATPaseのリン酸化に異常の見られる突然変異体のスクリーニングを進め、青色光による細胞膜H+-ATPaseのリン酸化応答に異常の見られる突然変異体5系統を単離した。さらに、青色光による細胞膜H+-ATPaseのリン酸化を阻害する化合物の同定や孔辺細胞の細胞膜H+-ATPaseの脱リン酸化に関与するホスファターゼの分子種の同定を進めた。2) 「気孔孔辺細胞特異的に発現する遺伝子の探索と機能解析」孔辺細胞特異的に発現する遺伝子の網羅的な解析を行い、新規の候補遺伝子を同定するとともに、候補遺伝子の機能解析を進め、これまでに知られている遺伝子の中で最も孔辺細胞での発現特異性が高いと考えられる遺伝子を同定し、この遺伝子のノックアウトラインにおいて気孔開閉制御に異常が見られることを見出した。3)「気孔開度制御への環境記憶システムや長距離シグナル伝達の関与について」気孔開口への日長条件の影響を調べ、シロイヌナズナの花成誘導を引き起こす長日条件において、短日条件よりも有意な気孔開口促進や気孔コンダクタンスの上昇が見られた。また、気孔開度制御への長距離シグナル伝達の関与として、土壌の栄養状態の気孔開度への影響についても着手した。4)「茎長分裂組織におけるクロマチン修飾による環境記憶システムの解析」フロリゲンは長距離移動性の花成誘導因子であり、その正体はFTタンパク質である。ここで興味深いのが、連続的に増加するフロリゲンの合成量と二値的な応答を示す花成の関係である。そこで、イネの茎頂メリステムのフロリゲンについて解析を行い、イネの花成には34日分のフロリゲン合成が必要であり、この時メリステムにおいて特徴的な花成マーカー遺伝子の発現が起きることが分かった。
平成27年度の研究により、気孔開度制御や花成制御における局所応答の分子機構のみならず、本領域の大きな目標である環境記憶システムや長距離シグナル伝達の関与を示す足がかりが得られてきた。今後は、研究支援センターの活用、さらに新たに加わる公募班を含め領域内連携研究をより積極的に進めていきたい。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 2件、 査読あり 16件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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