今後の研究の推進方策 |
吸器の形成に必要な遺伝子の同定と機能解析に関しては、レーザーマイクロダイセクション法によって単離された特異的遺伝子群の機能解析を継続して進める。必要に応じて、シングルセルトランスクリプトーム解析などをおこなって、その発現パターンから特異的な細胞群を同定し、どのようにして吸器が形成されるのかを発生生物学的、遺伝学的に解析する。吸器形成時に発現が上昇すると確認されたSBT遺伝子群に関しては系統解析をおこない、プロモーターをクローンする。YFP等の発現マーカーを使って、時空間的発現パターンを明らかにする。SBT遺伝子群が重要であると認識された場合は、SBTタンパク質を多田班と連携してin vitroで作成し、そのターゲットを探索する。 吸器を介したシグナル伝達機構の解明に関しては、ペプチド、植物ホルモン等の移動が寄生植物から宿主へ、あるいは宿主から寄生植物へ行われるかを検証する。必要に応じて、宿主の変異体を用いて感染実験を行い、宿主における寄生に重要な遺伝子を探索していく。特に、宿主植物のサイトカイニンのシグナル変異体および生合成変異体を用いて、宿主内でのサイトカイニンの役割を詳細に解析する。また、オーキシントランスポーターPIN1, PIN2, PIN3, PIN4, PIN9, LAX1, LAX2, LAX3, LAX5のGFP複合体を作成し、時空間的発現解析を行う。さらに、PINタンパク質については抗体を作成してinsitu解析から、オーキシン移動の極性を明らかにする。またオーキシンのトランスポーター阻害剤を用いてオーキシンの役割を解析する。 吸器を介した遺伝的情報の移動と記憶機構の解明に関しては、本研究室で開発したRNA-seq解析等から得られた情報を用いて、移動したmRNA等がないかどうかを検証し、もし発見された場合は、その機能を探索する。同時に角谷班と連携してエピゲノム的な変化があるかどうかをメチローム解析で検証する。
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