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2017 年度 実績報告書

寄生植物による維管束情報ハイジャック機構の解明

計画研究

研究領域植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分散型統御システム
研究課題/領域番号 15H05959
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

白須 賢  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, グループディレクター (20425630)

研究期間 (年度) 2015-06-29 – 2020-03-31
キーワード植物 / 病害抵抗性
研究実績の概要

寄生植物は穀物を含むさまざまな作物に寄生し、収穫量を大幅に減らす。特にアフリカや地中海沿岸での農業への被害は深刻であるが、寄生植物がどのように寄生するのかを理解することは、こうした被害への対策を講じるうえで重要なステップと考えられる。寄生植物は吸器と呼ばれる侵入器官を形成し、この器官を介して宿主組織に侵入、維管束を連結することで宿主との連絡を確立し、この連絡を介して水や栄養を宿主から奪う。
吸器の発生に関わる遺伝子を探索するため、コシオガマをモデル寄生植物として確立し、吸器発生初期の遺伝子発現を網羅的に解析して、多数の発現変動遺伝子を同定した。ここで同定された遺伝子群の中に、植物ホルモンの一種であるオーキシンの関連遺伝子が多数見出されたことに着目し、オーキシン生合成の鍵酵素YUCをコードするYUC3遺伝子の解析を進めた結果、YUC3は吸器発生部位の表皮で特異的に発現が上昇し、それに伴い、内生のオーキシン量が上昇していることが分かっている。さらにYUC3のプロモーター領域に結合する転写因子として、WRKY型転写因子を酵母1ハイブリッド法で同定した。YUC3のプロモーター領域にWRKY型転写因子の結合シス配列が複数見つかっている。コシオガマに吸器誘導を引き起こすキノンをかけると、WRKY型転写因子の発現が上昇することから、この因子がシグナル伝達に重要である可能性が示された。宿主側によるキノンの生成、寄生植物による認識およびシグナル伝達機構は未解明である。コシオガマを用いてRNAi法によって感染初期に発現誘導される寄生植物のキノンオキシドリダクターゼが重要であることを示した。このことはコシオガマでもキノンがシグナル伝達において重要であることを示している。さらに、宿主において吸器形成誘導能があるキノン類がリグニン由来のキノンモノマーであることを突き止めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ストライガの同じハマウツボ科の寄生植物であるコシオガマの実験系を確立できた。また、ゲノム・トランスクリプトームの整備による遺伝子クローニングが容易になってきている。コシオガマの吸器で発現する遺伝子群の酵母1ハイブリッド法ライブラリーの構築および新規シグナル因子の同定と研究計画は順調に推移している。また、宿主由来の吸器形成誘導物質が細胞壁リグニン由来のキノンモノマーであることが示されたことで、育種等による宿主の細胞壁改変によって、寄生をコントロールできる可能性を見いだしたことも大きな成果といえる。このことから、研究は概ね順調に推移していると判断する。

今後の研究の推進方策

吸器の形成に必要な遺伝子の同定と機能解析に関しては、レーザーマイクロダイセクション法によって単離された特異的遺伝子群の機能解析を継続して進める。必要に応じて、シングルセルトランスクリプトーム解析などをおこなって、その発現パターンから特異的な細胞群を同定し、どのようにして吸器が形成されるのかを発生生物学的、遺伝学的に解析する。吸器形成時に発現が上昇すると確認されたSBT遺伝子群に関しては系統解析をおこない、プロモーターをクローンする。YFP等の発現マーカーを使って、時空間的発現パターンを明らかにする。SBT遺伝子群が重要であると認識された場合は、SBTタンパク質を多田班と連携してin vitroで作成し、そのターゲットを探索する。
吸器を介したシグナル伝達機構の解明に関しては、ペプチド、植物ホルモン等の移動が寄生植物から宿主へ、あるいは宿主から寄生植物へ行われるかを検証する。必要に応じて、宿主の変異体を用いて感染実験を行い、宿主における寄生に重要な遺伝子を探索していく。特に、宿主植物のサイトカイニンのシグナル変異体および生合成変異体を用いて、宿主内でのサイトカイニンの役割を詳細に解析する。また、オーキシントランスポーターPIN1, PIN2, PIN3, PIN4, PIN9, LAX1, LAX2, LAX3, LAX5のGFP複合体を作成し、時空間的発現解析を行う。さらに、PINタンパク質については抗体を作成してinsitu解析から、オーキシン移動の極性を明らかにする。またオーキシンのトランスポーター阻害剤を用いてオーキシンの役割を解析する。
吸器を介した遺伝的情報の移動と記憶機構の解明に関しては、本研究室で開発したRNA-seq解析等から得られた情報を用いて、移動したmRNA等がないかどうかを検証し、もし発見された場合は、その機能を探索する。同時に角谷班と連携してエピゲノム的な変化があるかどうかをメチローム解析で検証する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] ペンシルベニア大学/バージニア大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ペンシルベニア大学/バージニア大学
  • [国際共同研究] トロント大学(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      トロント大学
  • [雑誌論文] Host lignin composition affects haustorium induction in the parasitic plants Phtheirospermum japonicum and Striga hermonthica2018

    • 著者名/発表者名
      Cui Songkui、Wada Syogo、Tobimatsu Yuki、Takeda Yuri、Saucet Simon B.、Takano Toshiyuki、Umezawa Toshiaki、Shirasu Ken、Yoshida Satoko
    • 雑誌名

      New Phytologist

      巻: 218 ページ: 710~723

    • DOI

      https://doi.org/10.1111/nph.15033

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Same tune, different song ? cytokinins as virulence factors in plant?pathogen interactions?2018

    • 著者名/発表者名
      Spallek Thomas、Gan Pamela、Kadota Yasuhiro、Shirasu Ken
    • 雑誌名

      Current Opinion in Plant Biology

      巻: 44 ページ: 82~87

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.pbi.2018.03.002

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Regulation of floral meristem activity through the interaction of AGAMOUS, SUPERMAN, and CLAVATA3 in Arabidopsis2017

    • 著者名/発表者名
      Uemura Akira、Yamaguchi Nobutoshi、Xu Yifeng、Wee WanYi、Ichihashi Yasunori、Suzuki Takamasa、Shibata Arisa、Shirasu Ken、Ito Toshiro
    • 雑誌名

      Plant Reproduction

      巻: 31 ページ: 89~105

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s00497-017-0315-0

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Interspecies hormonal control of host root morphology by parasitic plants2017

    • 著者名/発表者名
      Spallek Thomas、Melnyk Charles W.、Wakatake Takanori、Zhang Jing、Sakamoto Yuki、Kiba Takatoshi、Yoshida Satoko、Matsunaga Sachihiro、Sakakibara Hitoshi、Shirasu Ken
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 114 ページ: 5283~5288

    • DOI

      https://doi.org/10.1073/pnas.1619078114

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The GYF domain protein PSIG1 dampens the induction of cell death during plant-pathogen interactions2017

    • 著者名/発表者名
      Matsui Hidenori、Nomura Yuko、Egusa Mayumi、Hamada Takahiro、Hyon Gang-Su、Kaminaka Hironori、Watanabe Yuichiro、Ueda Takashi、Trujillo Marco、Shirasu Ken、Nakagami Hirofumi
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 13 ページ: e1007037

    • DOI

      https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1007037

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Quinone oxidoreductase 2 is involved in haustorium development of the parasitic plant Phtheirospermum japonicum2017

    • 著者名/発表者名
      Ishida Juliane K.、Yoshida Satoko、Shirasu Ken
    • 雑誌名

      Plant Signaling & Behavior

      巻: 12 ページ: e1319029

    • DOI

      https://doi.org/10.1080/15592324.2017.1319029

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] A yeast one-hybrid assay to explore transcription factors that initiate haustorium development in parasitic plants2018

    • 著者名/発表者名
      akanori Wakatake, Satoko Yoshida, Ken Shirasu
    • 学会等名
      第59回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] Classification and expression dynamics of subtilases in the parasitic plant Phtheirospermum japonicum2018

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Ogawa, Takanori Wakatake, Satoko Yoshida, Yasunori Ichihashi, Ken Shirasu
    • 学会等名
      第59回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] Auxin transport underlies xylem connection between parasitic plants and its host2018

    • 著者名/発表者名
      Takanori Wakatake, Satoko Yoshida, Ken Shirasu
    • 学会等名
      Keystone symposia Plant Signaling: Molecular Pathways and Network Integration
    • 国際学会
  • [学会発表] Classification of subtilases in the parasitic organ of Phtheirospermum japonicum2017

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Ogawa, Takanori Wakatake, Yasunori Ichihashi, Ken Shirasu
    • 学会等名
      環境記憶統合・第3回若手の会
  • [備考] 植物免疫研究グループ 研究室Website (日本語)

    • URL

      http://plantimmunity.riken.jp/publications_j.html

  • [備考] 植物免疫研究グループ 研究室Website(英語)

    • URL

      http://plantimmunity.riken.jp/publications_E.html

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-10-18  

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