傷害ストレスによってゲノムワイドに遺伝子発現が変化し、細胞がリプログラムする際に、どのようなクロマチン状態の変化がこうした傷害誘導性の遺伝子発現を可能にするのかを解析した。H3K4me3、H3K27me3、H3K36me3、 H3K9/K14ac、H3K27acの各ヒストン修飾に対する抗体を用いたChIPseqを行ったところ、傷害を受けたシロイヌナズナの根の細胞で数時間以内に発現誘導される多くの遺伝子領域で傷害前に既にH3K9/K14ac及びH3K27acの修飾が入っていることが判明した。傷害誘導後数時間以内にこれらのアセチル化量が上昇する領域も多くあり、それに伴って近傍の遺伝子の発現量も増加していた。またこのようなヒストンのアセチル化が、細胞リプログラミングを促進する傷害誘導性因子WIND1やRAP2.6Lなどの発現誘導に必須であること、アセチル化転移酵素であるHAG1とHAG3がこれらの傷害誘導性のヒストンアセチル化を触媒することが分かった。これらの結果から、傷害ストレス応答的な植物の細胞記憶のリプログラミングにHAG1とHAG3を介したヒストンアセチル化が重要であることを明らかにした。
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