計画研究
本年度は、1)DNA損傷ストレスに応答するクロマチンリモデリング因子とエピジェネティクス因子の解析、2)クロマチンの核内配置を制御メカニズムの解析、3)エピジェネティクス・ライブイメージング法の開発を進めたので、以下に研究実績の概要を示す。1)DNA損傷ストレスに応答するクロマチンリモデリング因子とエピジェネティクス因子クロマチンリモデリング因子RAD54はDNA損傷応答時に細胞核内でDNA修復フォーサイを形成する。共免疫沈降および質量分析により同定したRAD54相互作用因子であるヒストン脱メチル化酵素に注目して解析を進めた。2)クロマチンの核内配置を制御メカニズム シロイヌナズナの細胞核では、ヘテロクロマチンであるセントロメア・クロマチンが核膜周縁部に分散配置する。この分散配置に関与している複合体を同定した。この複合体は核膜を貫いて細胞質側のアクチン繊維と相互作用する。一方、核質側ではコンデンシンを介してセントロメア・クロマチンと相互作用する。各因子の変異体のHi-C解析を進めて、この複合体が全ゲノムレベルでDNA間の相互作用に影響を与えることがわかった。3)エピジェネティクス・ライブイメージング法の開発 ヒストン修飾に結合するミントボディの発現ラインの作成を進めた。発現ラインはプロモーターを代えることで、細胞質と核質両方に発現するラインの取得ができた。また、ミントボディを用いた免疫沈降により、細胞群や組織特異的なクロマチンIPが可能になった。
2: おおむね順調に進展している
原著論文を6報出版することができ、研究成果が雑誌表紙に採用されたから。
環境刺激を受けるとクロマチンにエピジェネティックな変化が引き起こされる。その変化を制御する分子メカニズムを、植物のDNA損傷ストレス感受性を利用することで、ヒストン修飾やクロマチンリモデリングに関与する植物のクロマチンの動態制御因子を同定し、その機能を明らかにする。また、環境刺激を記憶する細胞群を、クロマチン動態変化のライブイメージング解析や光学的細胞操作による機能阻害によって特定する。これにより脳がない植物における自律分散型の環境記憶システムのメカニズムをエピジェネティクス制御の側面から明らかにする。特に、環境刺激によって、クロマチン動態制御因子が核内のクロマチン構造を変化させるメカニズムを、クロマチン配置とエピジェネティクス制御の面から解析する。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (58件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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