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2017 年度 実績報告書

クロマチン長期記憶による環境応答制御機構

計画研究

研究領域植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分散型統御システム
研究課題/領域番号 15H05963
研究機関東京大学

研究代表者

角谷 徹仁  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20332174)

研究期間 (年度) 2015-06-29 – 2020-03-31
キーワードヒストン修飾 / ヒストンバリアント / DNAメチル化
研究実績の概要

1)遺伝子内クロマチン修飾による遺伝子発現制御
転写制御におけるプロモーターのH3K9meやDNAメチル化の重要性はよく研究されている。一方これらの目印は遺伝子内部にも分布する。遺伝子内部にH3K9me2が蓄積するシロイヌナズナの変異体ibm1では、さまざまな発生異常が誘発される。この現象を遺伝学的に理解するため、この発生異常をサプレスする変異体を順遺伝学的に選抜し、H3K9メチル化酵素遺伝子やDNAメチル化酵素遺伝子に加え、H3K4脱メチル化酵素であるLDL2を同定した。LDL2はibm1変異による遺伝子のH3K4me1低下に関与することで転写の異常と発生異常を引き起こすことが明らかとなった。さらに、H3K9メチル化酵素遺伝子の変異体では、H3K9me2の低下に伴い、H3K4me1が上昇することがわかった。これらの結果は、H3K9me2が遺伝子内部のH3K4me1の減少を介して転写を抑制していることを強く示唆する(Inagaki et al 2017 EMBO J)。さらに、ibm1変異体を用いたエピゲノム解析によって、この変異体における発生異常誘発は病害応答経路の活性化によることが明らかになった。病害応答の記憶にエピジェネティックな修飾が関わりうることを支持する結果としても興味深い。
2)配列特異的抗抑制因子の解析
トランスポゾンのコードする抗抑制因子VANCの局在、および、このタンパク質とその標的配列の進化を調べた結果から、高い配列特異性を持ちつつ速い進化をするのに、標的配列のタンデムリピート形成が鍵となることがわかった(Hosaka et al 2017 Nat Commun)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

H3K4me1は、酵母からヒトにまで保存されたエピジェネティックな目印であるが、エンハンサーの目印として注目され、遺伝子内修飾としての重要性の理解は遅れていた。植物の遺伝学およびエピゲノミクスを用いたアプローチから、その重要性を示す結果にたどり着いたのは、当初の計画を超える進展と考える。また、配列特異的な抗抑制タンパク質VANCとその標的配列の速い進化の背景となる分子機構が明らかになった。

今後の研究の推進方策

転写と結びつく遺伝子内修飾であるH3K4me1が、どのようにして、より安定な修飾の制御に結びつくか、遺伝学とエピゲノミクスを用いて理解したい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Transposable elements, genome evolution and transgenerational epigenetic variation2018

    • 著者名/発表者名
      Hosaka, A., Kakutani, T.
    • 雑誌名

      Current Opinion in Genetics & Development

      巻: 49 ページ: 43~48

    • DOI

      10.1016/j.gde.2018.02.012

  • [雑誌論文] Gene-body Chromatin Modefication Dynamics Mediate Epigeneome Differentiation in Arabidopsis2017

    • 著者名/発表者名
      Inagaki, S., Takahashi, M., Hosaka, A., Ito, T., Toyoda, A., Fujiyama, A., Tarutani, Y., and Kakutani, T.
    • 雑誌名

      EMBO J.

      巻: 36 ページ: 970~980

    • DOI

      10.15252/embj.201694983

  • [雑誌論文] Evolution of sequence-specific anti-silencing systems in Arabidopsis2017

    • 著者名/発表者名
      Hosaka, A., Saito, R., Takashima, K., Sasaki, T., Fu, Y., Kawabe, K., Ito, T., Toyoda, A., Fujiyama, A.,Tarutani, Y., and Kakutani, T.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 8 ページ: 2161

    • DOI

      10.1038/s41467-017-02150-7

  • [学会発表] 遺伝子内部のクロマチン修飾動態がシロイヌナズナのエピゲノム分化を仲介する2017

    • 著者名/発表者名
      稲垣宗一、高橋まゆみ、保坂碧、伊藤佑、豊田敦、藤山秋佐夫、樽谷芳明、角谷徹仁
    • 学会等名
      第11回日本エピジェネティクス研究会
  • [学会発表] シロイヌナズナの配列特異的抗抑制機構の早い進化2017

    • 著者名/発表者名
      保坂碧、斎藤絡、高嶋和哉、佐々木卓、樽谷芳明、角谷徹仁
    • 学会等名
      第11回日本エピジェネティクス研究会
  • [学会発表] トランスポゾンにコードされる抗抑制因子の特異性と多様性2017

    • 著者名/発表者名
      斎藤絡、佐々木卓、保坂碧、樽谷芳明、角谷徹仁
    • 学会等名
      第11回日本エピジェネティクス研究会
  • [学会発表] シロイヌナズナの配列特異的抗抑制系とその速い進化2017

    • 著者名/発表者名
      保坂碧, 斎藤絡、高嶋和哉、佐々木卓、樽谷芳明、角谷徹仁
    • 学会等名
      日本遺伝学会第89回大会
  • [学会発表] Evolution of sequence-specific anti-silencing system in Arabidopsis2017

    • 著者名/発表者名
      角谷徹仁
    • 学会等名
      France・Japan Epigenetics workshop 2017
  • [学会発表] DNA methylation and trans-generational inheritance in plants2017

    • 著者名/発表者名
      角谷徹仁
    • 学会等名
      Three Special Seminar
  • [学会発表] 配列特異的抗抑制系の進化2017

    • 著者名/発表者名
      角谷徹仁
    • 学会等名
      第40回日本分子生物学会

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公開日: 2019-12-27  

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