研究領域 | 稲作と中国文明-総合稲作文明学の新構築- |
研究課題/領域番号 |
15H05965
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 慎一 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (80237403)
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研究分担者 |
小柳 美樹 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 客員准教授 (40436671)
槙林 啓介 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 准教授 (50403621)
秦 小麗 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任准教授 (70714997)
吉開 将人 北海道大学, 文学研究科, 教授 (80272491)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 考古学 / 新石器文化 / 稲作 / 都市形成 / 中国文明 |
研究実績の概要 |
研究の主体となる海外考古学調査については、秋季と冬季に2回のコア期間を設け集中的に実施した。それに先立ち、総括班会議や全体会議を開催した際に計画班メンバーの打ち合わせを行うとともに、メールや電話連絡により中国側研究協力者とも綿密な事前打合せを行 った。 9月の調査は、研究代表者・研究分担者・連携研究者の計4名が延べ14日間にわたり訪中し、中国側共同研究者と合流のうえ現地調査を実施した。調査対象としたのは田螺山遺跡と良渚遺跡群であったが、関連遺跡出土品の調査なども併せて行った。両遺跡における調査の具体的内容は、土器、石器、木器等の各種人工遺物の観察・実測・写真撮影が中心であった。 2-3月の調査では、研究代表者・研究分担者・連携研究者・研究協力者の計5名が延べ14日間にわたり現地調査に従事した。対象としたのは、9月期と同じく田螺山遺跡と良渚遺跡群の2ヶ所である。調査内容は基本的に9月期を踏襲するものであるが、田螺山 遺跡においては土器と木器の調査を集中的に行い、良渚遺跡群では各調査地点で出土した土器、玉器を中心に中国人研究協力者とともに調査・研究を行った。また、江蘇省を訪問し、蒋荘遺跡の出土品を丹念に観察する機会を得たことにより、来年度の共同研究の対象遺跡の候補として選定した。 文献史学の吉開は、「中国文明観の学史的研究」を担当し、①「学術史」、②「非漢族」、③「台湾」、④「学術と制度・社会」という四つの視点から研究を進めた。また、同じく文献史を専門とする公募研究の大川を講師に招き研究会を開催した。 3月には領域全体会議と領域シンポジウムを東京大学において開催した。そこでは、研究代表者による本計画班の研究成果報告が行われたほか、招聘した中国人研究者からは最新の調査結果が報告された。その後、今年度の総括と来年度の計画策定を日中共同で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度についても、これまで継続的に調査を実施してきた田螺山遺跡と良渚遺跡群とを主要な調査対象としたため、中国人担当者とも十分に意思疎通が図られており、比較的短い調査期間であったにもかかわらず、当初予定の作業を順調にこなすことができた。また、他の計画班との連携もスムースに行われ、土器や木器の調査ではとりわけ大きな進展があった。 3月調査時に中村、槙林の2名が江蘇省を訪問し、蒋荘遺跡をはじめとする江蘇省考古研究所による調査遺跡とその出土品を観察する機会をもったことで、来年度以降の共同研究を江蘇省にまで広げる足掛かりを築くことができた。 貝塚遺跡としては浙江省で初の発見となった井頭山遺跡については、地権者との補償交渉が難航したため発掘調査を開始するに至っていないが、来年度にはそれが可能となることが確定したため、当初計画からの遅れは十分にカバーすることが可能であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
浙江省における調査・研究は、これから着手する井頭山遺跡などもあるものの、全体としては研究成果の取りまとめの段階へと進むこととなる。論文形式での成果発表に注力しなければならない。一方、江蘇、湖北といった長江流域の他地域、さらには河南、陝西、山西といった黄河流域の他地域へも研究を拡大する必要がある。その着実な実施のためには研究スタッフの増強が求められることから、今年度、石器使用痕研究の専門家である原田幹氏を連携研究者として追加した。また、来年度には編み物研究の専門家である松永篤知氏にも参加を要請する予定である。 2年目から加わった4つの公募研究のうち二つは本計画研究と深い関わりをもつが、それらとも有機的な連携を推し進め、学問的に有意義な成果を最大限に引き出す努力と工夫を不断に継続していく必要がある。
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