研究領域 | 稲作と中国文明-総合稲作文明学の新構築- |
研究課題/領域番号 |
15H05969
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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研究分担者 |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
岡崎 健治 鳥取大学, 医学部, 助教 (10632937)
宮田 佳樹 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 博士研究員 (70413896)
渋谷 綾子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任助教 (80593657)
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (50569283)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 人類学 / 年代学 / 骨考古学 / 古病理学 / 考古植物学 |
研究実績の概要 |
平成29年9月と平成30年2月に浙江省良渚遺跡群を中心に現地調査を実施した。新たな分析試料として、浙江省馬家浜遺跡出土の人骨で、コラーゲン抽出にもちいる骨片とエナメル質をサンプリングした。また広富林遺跡出土人骨の整理作業をほぼ完了した。発見された結核症例については、論文を作成して国際誌に投稿した。またエナメル質減形成についてもデータを採取した。また馬家浜遺跡において出土人骨の整理作業を実施した。 良渚遺跡群においては、骨コラーゲンの炭素・窒素同位体比から雑穀類を主食とした個体が複数含まれていることが示されたので、それらの個体が外来者である可能性を検討するために、歯エナメル質を採取して酸素同位体比、ストロンチウム同位体比、炭素同位体比の分析をすすめた。歯エナメル質は幼少期に摂取した飲料水の酸素同位体比、植物などのストロンチウム、食物の炭素の同位体を反映するので、雑穀地帯からの移入者であればC3植物を主食とした個体と異なる傾向を示すと期待される。あわせて、骨アパタイトの酸素同位体について検討を開始した。 田螺山遺跡の象牙製品についても、他の動物骨と酸素同位体比を比較して、外来品である可能性を検討した。昨年度採取した、河姆渡遺跡人骨について、骨コラーゲンの炭素・窒素同位体比の測定を行った。また、田螺山遺跡よりも古い跨湖橋遺跡の動物骨において、コラーゲンに含まれる個別アミノ酸で窒素同位体比を測定し、野生イノシシと家畜ブタの違いが新石器時代初頭にみられるかを検討した。 炭化稲のストロンチウム同位体比について、田螺山遺跡と良渚遺跡群の資料で測定を行った。また遺跡周辺で得らえた現生植物のストロンチウム同位体比を比較検討した。 残存デンプン粒分析は、広富林・良渚・馬家浜遺跡出土人骨の歯石で実施し、堅果類などのデンプン粒を確認した。土器残留脂質の分析は、主に良渚遺跡群で分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画当初予定していた田螺山・良渚遺跡群・広富林遺跡に加えて、馬家浜遺跡から出土した多数の人骨について分析許可を得ることができた。また予想していなかった大規模な移住の可能性を発見したので、人歯エナメル質の酸素同位体比について分析項目に追加することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は良渚遺跡群との比較のために、江蘇省蒋庄遺跡の良渚文化期の人骨群の分析について、調査を実施した南京博物院と協議中である。もしも許可が得られれば、骨コラーゲンと歯エナメル質で分析を行い、良渚時代の食生活について都市的な性質をもつ拠点集落と地方の小規模な集落との比較を実施する。これによって、良渚遺跡群がもつ都市性についての議論が可能なると期待される。跨湖橋・河姆渡・馬家浜文化との比較において、都市とその中央性という視点から、各分析項目のデータを検討する計画である。
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