研究実績の概要 |
DNAの二重鎖切断(DNA double strand break; DSB)は、細胞にとって最も危機的なDNA損傷の一つであり、その修復には相同組換えが主要な分子機構の一つとして機能する。本計画では、DSBが導入された染色体はいかなるメカニズムによってDSB修復を実現しているのか、染色体の時空間制御機構解析、組換え反応の試験管内再構成系、さらに、リアルタイム解析・1分子解析などによって多面的に切り込み、且つ、接合型変換をモデル系として4D情報を解析することで、DSB修復装置が核内でどのように時空間を制御して作動するのか、分子基盤や基本原理を明らかにしようとした。特に、申請者が発見した分裂酵母の相同組換え因子を主軸に解析し、当該年度は次の実績をあげた。 (1)分裂酵母Rad51リコンビナーゼのDNA鎖交換反応の分子機構について、これまでに本領域で開発したFRETを利用したリアルタイム解析システムを用いて、3種類のDNA結合部位変異体を解析し、それぞれのDNA結合部位の役割を明らかにした。さらに、この解析をもとに、DNA鎖交換反応における中間体遷移機構の分子構造モデルを提唱した(Ito et al, Nature Com, 2020 印刷中)。 (2)前年度までに、分裂酵母の接合型変換に関与する因子として、ヒストンのモノユビキチン化因子HULCが関与することを見出していた。当該年度は、これを詳細に解析して、HULC変異株ではSRE3(サイレントなMカセット近傍の組換えエンハンサー配列)におけるSwi6(HP1)の局在が半分程度に減少することを見出し、接合型変換機構への分子レベルの関与を明らかにした(Chaves et al., 日本遺伝学会2019大会)。
|