研究実績の概要 |
遺伝情報を担う染色体では様々な反応が調和して起こっている。その結果、染色体が安定に維持され、倍加し、娘細胞へと分配されていく。しかしその詳細には未知の部分も多く、染色体がその構造を維持しながらどのように倍加して行くのか、そして他の染色体動態とどのように連携するのかを解明することを本研究の目的としている。本研究では出芽酵母の精製タンパク質から再構成したin vitro DNA複製系を主として用いる。この系の効率を上げるための複製開始機構の解析と、この系を用いたDNA複製と染色体動態の連携に関する研究を行なった。 in vitro系に加える各複製タンパク質の量の最適化を継続して行なっている。さらに、複製開始タンパク質のSld3-Sld7複合体については、Sld7が必須ではないことから、Sld3 とSld3-Sld7の差異を詳細に解析したが、Sld3-Sld7複合体として働くことの意味付けが十分にできない。また、姉妹染色体を繋ぎ止めるコヒーシン複合体の精製を継続したが、解析に供する量を得るには至っていない。 一方、LacIに依存した複製フォーク停止の系を確立した。この系では、in vitro複製系に精製したLacIリプレッサータンパク質とその結合部位であるLacO配列を持つ鋳型DNAを投入すると、LacIに依存してLacO部位で複製フォークが停止する。複製フォークの先頭で2本鎖DNAを1本鎖にほどくCMGヘリカーゼを精製し、その活性をLacI, LacO存在下で調べると、LacIがLacOに結合していても、2本鎖DNAを1本鎖にほどくことが分かった。ここにリーディング鎖を合成するDNAポリメラーゼε(Polε)を加えると、LacI, LacOに依存してCMGヘリカーゼは停止する。この際PolεはDNA合成は行なっておらず、PolεとCMGヘリカーゼの相互作用が複製フォーク停止には重要であることが分かった。
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