計画研究
ウイルスは宿主細胞を含む様々な細胞機能を利用・略奪することによって増殖する。そこで感染細胞の核内には、ウイルス・宿主相互作用を介した連続的な摂動が加わる。本研究では、ウイルス感染によって、染色体が調和して機能する仕組み「染色体オーケストレーションシステム(染色体OS)」がどのように制御されているかを解明することを目的としている。当該年度は、核内でウイルスゲノム(RNA)の転写・複製を行うインフルエンザウイルスをモデルとして、野生型とヒストンメチル化酵素が欠損した培養細胞を用いて、感染に伴う染色体3D構造の変化を4CならびにHi-C法で解析した。また、同ヒストンメチル化酵素と結合する、ウイルスタンパク質ならびに核内タンパク質を同定した。さらに、同ヒストンメチル化酵素の欠損 (KO)マウスを用いてインフルエンザの病態を制御するメカニムズを検討した。KO細胞では、野生型(WT)に比べ、クロマチンの3-D構造が大きく変化していること、また WT細胞にウイルスを感染させるとクロマチンの3-D構造がダイナミックに変化することがわかった。また、感染させたKOマウスでは、WTに比べ、ウイルスの複製、インターーフェロン応答、炎症反応が大きく変化していることがわかった。さらに、KO細胞あるいは感染させたWT細胞でクロマチン3-Dが変化した領域には、インフルエンザウイルス感染症の病態の形成に関わる、ウイルスの複製を制御する領域、インターフェロン応答に関与する領域、炎症反応に関与する領域が含まれていることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、前年度の研究を発展させて、メチル化酵素欠損細胞を用いて染色体3D構造変化を解析することができた。さらにメチル化酵素欠損マウスを用いて、インフルエンザの病態形成における同酵素の役割に関する検討を進めることが出来た。
今後はウイルス感染にともなう、宿主染色体の3D構造変化(ループ形成など)のメカニズムについて、さらに検討する予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 5件、 招待講演 10件) 産業財産権 (2件)
Chembiochem
巻: 20(12) ページ: 1563-1568
10.1002/cbic.201800769
Int J Mol Sci
巻: 20(2) ページ: E239
10.3390/ijms20020239
Nat Microbiol
巻: 4(2) ページ: 258-268
10.1038/s41564-018-0289-1
Sci Rep
巻: 8(1) ページ: 5472
10.1038/s41598-018-23745-0