研究概要 |
環形動物の巨大ヘモグロビンとしては初めて, 一部のサブユニットがリガンド非結合型となっている結晶構造の解析に成功した. 構造解析の結果得られた電子密度図で, A1鎖以外のヘムポケットにはまったく電子密度が観測されず, リガンドが何も配位していないことが明らかとなった. この結晶を再度溶解させて可視光スペクトルを計測すると, 630nm付近の吸収が観測された. これらのことからこの結晶構造は, A1鎖のみ酸素が結合したまま他のグロビン鎖ではヘム鉄が酸化されてメト型となった状態(met(A1-oxy)型)であると結論した. さらに、これまでの酸素結合型と比較して構造の変化が認められ, EFダイマー構造を両者で比較してみると, ヘムを含めたEFダイマー間の接触部位での構造変化が協同性の機構に重要な役割を果たしていることが明らかになった. これまでの研究により、環形動物マシコヒゲムシの巨大ヘモグロビンではCa^<2+>やMg^<2+>などの二価金属イオンの存在下で酸素協同性が顕著に上昇することが明らかとなっている. これら金属イオンによる巨大ヘモグロビンの酸素協同性への影響に関して,立体構造からその機構を明らかにするため,Ca^<2+>およびMg^<2+>が結合した状態でマシコヒゲムシ巨大ヘモグロビンの構造解析を行った. その結果, いずれの構造もoxy型で, Ca^<2+>やMg^<2+>は各グロビン鎖の間を結びつけるように結合していることが明らかになった. これらの金属結合型oxy構造は, 先にCa^<2+>やMg^<2+>が存在しない状態で構造解析が行われたoxy型構造と比較して, その全体的な構造はほとんど変化しておらず, このことからCa^<2+>やMg^<2+>の存在は, oxy型(R型)構造をより安定的に保つことに寄与しているものと思われる.
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