計画研究
C01班(人生班)は、国内外の大規模コホートデータを駆使し、生涯発達史を縦断的にとらえるライフコースアプローチによって、思春期の主体価値の形成過程とその長期的生涯影響の解明を目標に研究を順調に進めている。R元年度は以下の研究成果をあげている。1). 西田らは、A01班・B01班・D01班との連携研究として開発した主体価値測定アプリと従来の主体価値測定法との比較研究を行い、主体価値測定アプリによって、より多様な思春期主体価値のプロファイルを把握できることを明らかにした(Iijima et al, 2020)。この測定アプリを導入した東京ティーンコホート16歳調査前半を順調に進め、すでに1200組の親子の主体価値データを収集した。前年度までに完了した14歳時調査とすでに収集されている12歳時調査のデータを用い、思春期における主体価値の形成過程、特にロールモデルの獲得が主体価値形成に与える影響を明らかにした(Nakanishi et al, 2019)。2). 山崎らは、世界最長の追跡期間を誇る全英出生コホートデータを用い、英国MRCとの国際共同研究を進め,思春期の主体価値と自己制御の相互作用が高齢期のウェルビーイングを予測すること(Yamasaki et al,under review),中年期における女性の主体価値が高齢期の認知機能低下と関連すること(Nakanishi et al, 2019),など主体価値の生涯影響を実証的に明らかにした。3). 川上らは、大規模な思い出し法による横断研究、前向きコホート研究により思春期の主体価値の決定要因および成人期の健康および幸福への影響を多面的に分析し、子供時代の経験と思春期の主体価値との関係、および思春期の主体価値が成人期の生活習慣、抑うつ・不安、自殺傾向、心理的ウェルビーイングに与える影響を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
東京ティーンコホート調査は、当初計画にそって順調に進行しており、データ解析と論文化も概ね順調である。主体価値国際共同研究についても、英国MRCとの共同研究4件(継続1件,新規3件)に加えて,英国Bristol大学ALSPACとの共同研究4件(新規4件),米国Fordham大学との共同研究2件を順調に進めている.特に、英国Bristol大学ALSPACとは,2019年8月に合同国際シンポジウムを東京にて開催し,今後の日英共同研究に関するアクションプランを策定するとともに次年度国際誌特集号にて共同研究の成果発表を行うこととなった。「まちと家族の健康調査」(J-SHINE)で収集した大規模データから思春期主体価値の決定要因と健康および心理的ウェルビーイングとの関係を論文発表した。米国のコホート調査データを利用し思春期主体価値と成人期の健康・ウェルビーングとの関連を解析した。Midlife in Japan (MIDJA)研究のバイオマーカー調査参加者の追跡調査を実施した。
東京ティーンコホートの16調査調査の完了を目指すとともに、得られた思春期の主体価値データの縦断解析を進める。特に、児童期までに主として親子関係の中で伝達・継承された価値(継承価値)が思春期の人間関係の広がりや新たなロールモデルの獲得にともなって相対化されていくプロセス(value socialization)」を実証的に明らかにする。今年度に引き続き,国際共同研究の論文化・公刊を継続して進める.共同研究先(ALSPAC,MRC,Fordham大学)と定期的にウェブミーティングを実施し,進捗確認とディスカッションを行う.今年度中に5件の論文投稿を目指す。MIDJA研究追跡調査データを用いた主体価値とバイオマーカーとの関連性の解析を進める。また米国の青年期からのコホートを使って、思春期の主体価値がその後の人生(例えば結婚や離婚、就職など)にどう影響するかを明らかにする。5年間の研究成果を統合して、思春期主体価値の決定要因と健康・生活への影響についてまとめる。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 4件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
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