計画研究
笠井は、統合失調症患者を対象に主体価値の不調からの回復についてインタビュー調査を実施し(N=30)、能智と連携して解析をすすめた。インタビュー調査に基づく心理社会的支援プログラムを開発し、プレ調査として4名の協力者に支援プログラムを実施し、事前評価・事後評価・フォローアップ評価を行った。荒牧は、東京ティーンコホートや公募班阪上の収集した思春期の語りのデータの解析を試みた。本年度は、語りに含まれる単語の抽象度を計量し、知能との関連を調べた。文東は、思春期における精神的な不調を反映するバイオマーカーの候補として、セロトニントランスポーター(SLC6A4)遺伝子のプロモーター長多型(5-HTTLPR)およびプロモータ領域におけるDNAメチル化を挙げており、東京ティーンコホートサンプルを用いて、これらの指標の測定を行うことを計画した。岡本は、思春期後期うつに対する主体価値に基づいた行動変容プログラムの効果に関する無作為化比較試験を開始した。現在まで4名の候補者のうち1名が参加基準を満たし、10週間の待機の後、10週間の行動変容プログラムへの参加が完了している。また、同時にプログラム前後でのMRI撮像を行い、さらにプログラム参加中にはウェラブルデバイスによる日常的な運動強度を測定した。個々のデータについては現在解析を行い、また今後の被験者リクルート体制を強化した。能智は、先天盲児を対象にした見えない自己の認識の発達過程を縦断的に分析し、国内学会で発表したほか、失語症者を対象に相互作用を通じての発話主体の回復・維持の事例分析を継続して行った。また、笠井と連携して統合失調症患者を対象に主体価値の不調からの回復についてインタビュー調査を実施し分析を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
笠井は、統合失調症患者30名のインタビューの質的分析結果の論文執筆を行い、心理社会的支援プログラムについて、効果検証準備を行っている。荒牧は、思春期の語りを解析するために必須となるアルゴリズムの開発、言語リソースの構築を同時に進めている。アルゴリズムの開発においては、語彙の難易度について,思春期家族構成について研究し、論文を投稿中である。文東は、東京ティーンコホート第2期サンプル (n=1500)の唾液サンプルから、プロメガ社Maxwell RSCによるDNA抽出を行った。また5-HTTPLRのタイピングおよびSLC6A4プロモーター領域のDNAメチル化測定を行っている。岡本は、行動変容プログラムの開発を行い、プログラムの内容や開発について国内外の学会等で口頭発表を行い、実際の様子をケースレポートとして論文発表済みである。また、行動変容プログラムによる内発的動機づけの神経作用機序に関する論文を発表している。能智は、先天盲児における自己像の発達過程の研究、社会的場面における失語症者の自己認識の回復・維持の研究ともに、データのトランスクリプトの作成、相互作用分析などが行われ、一定の成果を得ており、論文化を行っている。脳損傷者全般についての主体性のリカバリーに関する研究についても質的分析を終えている。
笠井のD01内連携により、統合失調症患者30名のインタビューの質的分析結果について、国際学会・学術誌等で発表する。質的研究で明らかになったリカバリー促進因子を基に開発した心理社会的支援プログラムについて効果検証を行い、主体価値の発展過程を明らかにする。荒牧は、抽象度-具体性などこれまで計測が困難とされてきた指標に基づいた研究を発展する予定である。文東は、東京ティーンコホートサンプルから得られた5-HTTLPRとSLC6A4DNAメチル化データについて、アンケート調査の結果や脳画像との相関などを検証し、バイオマーカーとしての有用性の検討を行う。岡本は、思春期後期うつに対する主体価値に基づく行動変容プログラムの効果に関する無作為化比較試験に対するリクルート体制を強化し、効果検証を継続していく。また、ウェラブルデバイスやMRIによる測定を並行して実施し、行動変容による主体価値の発展過程の解明を主体価値指標、心理指標、行動指標、脳基盤から統合的に解明するよう進めていく。能智は、先天盲児および失語症者の事例については、成果が出ている部分について論文執筆を進めていく。笠井との連携で行われている統合失調症患者のリカバリーについても同様である。その他、脳損傷者その他の障害者や慢性疾患患者のリカバリーについては、さらにデータ収集を進めていく。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (25件) (うち国際共著 3件、 査読あり 25件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (41件) (うち国際学会 9件、 招待講演 3件) 図書 (2件) 備考 (3件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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