計画研究
モチベーションは、黒質-線条体系を中心とした報酬系のみではなく、モノアミンなどが関わる気分や覚醒が大きく関与している。オレキシンは、これらを統合的に制御すると考えられる神経ペプチドであり、オレキシン作動性ニューロンはモチベーションの必要な行動をとるときや、強い情動をともなうキューによって興奮することが明らかになっており、覚醒や意識、報酬系、自律神経系・内分泌系を制御する。本課題では、オレキシンニューロンの入出力系の役割を解明し、そのなかで視床下部のオレキシン産生ニューロンを中心とした覚醒制御システムが、報酬系の機能にも関わり、また情動記憶の強化を介して行動をどのように変容させうるかを明らかにする。さらに行動制御の神経回路を理解するために、大脳辺縁系がどのようにして覚醒系を制御しているかを解明する。またオレキシンニューロン自体の光刺激が報酬系にどのように影響を及ぼしているか、光刺激実験と場所嗜好性試験を組み合わせて明らかにする。さらに、社会環境・環境ストレスがどのような経路でモチベーションにかかわる神経回路に変化をあたえ、適応行動や動機付け行動を制御するのかを明らかし、依存症、新型うつなどモチベーションに起因する問題や、うつ病の前駆状態といえる適応障害の病態に対処また理解するための核となる知見を得ることを目的とする。また、体内時計の分子機構解明を介して、概日リズムの正常化がモチベーション機能にあたえる影響を解明することも目指す
2: おおむね順調に進展している
今年度は、①大脳辺縁系や報酬系を賦活した結果、どのような神経経路を介してオレキシン系を中心とした覚醒システムを賦活するかを明らかを解明するため、ウィルスベクターをもちいたトレーシングを行い、大脳辺縁系および報酬系とオレキシンニューロンの関係を明らかにした。②オレキシン産生ニューロンやモノアミンニューロンがどのような経路で報酬系に影響を与え、また情動記憶の固定に働くかを構造的に明らかにした。これらは、ほぼ計画通りの進行状況にある。オレキシンニューロンの光刺激による場所嗜好性の変化に関しては、現在進行中であり、数ヶ月以内にデータが出ることが見込まれる。
本年度明らかにしたオレキシンニューロンの入力系に加え、覚醒にかかわるヒスタミンニューロンの入力系を明らかにする。またオレキシンニューロンの直接の上位ニューロンに入力する、さらに上位のニューロン群をcTRIO法や順行性トレーサーの組み合わせにより明らかにする。さらに、場所嗜好性テストに加え、ノーズポークやNovel Object Recognition Testとオレキシンニューロンの光刺激を組み合わせ、オレキシンニューロン興奮が報酬系にどのように影響をあたえるか、報酬探索行動にどのような影響をあたえるかを明らかにする。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
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