研究領域 | 「意志動力学(ウィルダイナミクス)の創成と推進」に関する総合的研究 |
研究課題/領域番号 |
16H06404
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
乾 明夫 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80168418)
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研究分担者 |
須藤 信行 九州大学, 医学研究院, 教授 (60304812)
佐久間 英輔 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90295585)
浅川 明弘 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (10452947)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 食環境 / 脳内環境 / 体内環境 / 消化管ペプチド / 腸内フローラ / 骨髄 / 視床下部 |
研究実績の概要 |
こころの発達・意欲を阻む原因を解明するため、社会-脳内-体内環境相関の全人的ループのバランス破綻のメカニズムの検討を行った。鹿児島大学においては、マウスにおいて、two-bottle sucrose preference testを施行し、sucrose濃度を増加させてから中断し、再開するとsucroseに対する感受性が上昇した。また、高脂肪食による飼育は、絶食した後の絶食解除後の摂食量が普通食に比べ増加した。さらに、高脂肪食における絶食解除後の摂食量の増加は、ニコチン受容体のsubtypeであるα7のアゴニストによって抑制された。肥満症の血液サンプルを用い、食欲促進ホルモンであるグレリンの自己抗体の探索を行い、グレリンの自己抗体が存在することを確認した。九州大学においては、神経性やせ症(AN)女性患者と女性健常者における糞便中腸内細菌を、次世代シークエンサーによって比較した。その結果、門レベルにおいて、AN患者群は健常群と比較し、バクテロイデスの比率が有意に少なかった。また動物実験では、AN患者の腸内細菌を無菌マウスに移植し、AN型人工菌叢マウス(ANマウス)を作製した。ドナー側(ヒト)とレシピエント側(ANマウス)の腸内細菌叢を主成分分析にて統計解析し、ANマウスの腸内細菌叢はドナー側の腸内細菌叢をよく反映した構成となっていることを確認した。名古屋市立大学においては、環境ストレスの負荷が、脳内ニューロン・ミクログリア相関の破綻を来す結果、ミクログリアの過剰な活性化による炎症反応を惹起する神経基盤の解析を、統合失調症の病態モデルマウスにて、ミクログリアCX3CR1受容体リガンド様分子の脳内動態に着目し行った。その結果、CX3CR1の活性化と神経細胞毒性を呈するニューロン障害関連タンパク質を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
報酬系のメカニズムにニコチン受容体が関与している可能性や食欲促進ホルモンであるグレリンの自己抗体が存在することを確認した。神経性やせ症の糞便中腸内細菌において、バクテロイデスの比率が有意に少ないことを見いだすとともに、AN型人工菌叢マウスを作製し、腸内細菌叢がドナー側(ヒト)の腸内細菌叢と近似していることを確認した。また、ミクログリアCX3CR1受容体リガンド様分子の脳内動態に着目し、CX3CR1の活性化と神経細胞毒性を呈するニューロン障害関連タンパク質を同定した。これらの知見は、本研究課題において次年度以降に予定している研究の実施に有用であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降においても、引き続きこころの発達・意欲を阻む原因を解明するため、脳内報酬系を中心に、社会・環境因子、ミクログリア・消化管ペプチド・腸内フローラなどを解析対象にして、社会-脳内-体内環境相関の全人的ループのバランス破綻のメカニズムの検討を行う。鹿児島大学においては、脳内報酬系を中心にニコチン受容体を介したミクログリア-神経細胞における相互作用の解析、グレリンに対する自己抗体をアシルグレリンとデスアシルグレリンに分けた食欲・抑うつ・不安に関する解析、意欲に影響を及ぼす食品由来物質の解析を行う。九州大学においては、ANマウスを用いてAN患者の腸内細菌が体重制御・行動特性にどのように影響しているかについて検討を行う。名古屋市立大学においては、同定されたCX3CR1の活性化と神経細胞毒性を呈するニューロン障害関連タンパクの解析を行う。
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