研究領域 | パレオアジア文化史学ーアジア新人文化形成プロセスの総合的研究 |
研究課題/領域番号 |
16H06408
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西秋 良宏 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (70256197)
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研究分担者 |
高倉 純 北海道大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (30344534)
山岡 拓也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (30514608)
石田 肇 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70145225)
松藤 和人 同志社大学, 文学部, 教授 (90288598)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | ホモ・サピエンス / ネアンデルタール人 / 新人アフリカ起源説 / 中期旧石器時代 / 後期旧石器時代 / 現代人的行動 |
研究実績の概要 |
初年度に引き続き、アジアにおける現生人類の定着プロセスに関する時間的空間的枠組みをつくるため、次の研究を実施した。 (1)データベースの構築。文献収集、探査によって、約10万-2万年前の遺跡を網羅的に調査し、遺跡の位置や地層、年代、出土人骨、出土石器群の特徴などをデータベース(PaleoAsiaDB)に入力した。石器群の記載にあたっては、新たに定義した23のモードの有無によって記述する方法を実践した。これによって、インダストリーが定義されていなかったため従来、定量的な比較研究が困難であった東アジア、東南アジアの石器群を統一的に比較することができるようになった。 (2)データ収集。アジア各地におもむき、編年構築用の実資料の入手に努めた。西アジアではイラン、アゼルバイジャン、中央アジアではウズベキスタン、カザフスタン、南アジアではパキスタンで関連データを得た。また、中国、韓国などで地域編年の核となる遺跡資料の実見調査を実施した。これらに、A02が実施するヨルダン、A03が調査を進めているオマーンなどのデータを統合することによって、相当量の自前データを得ることができた。 (3)成果の統合と解釈。上記のデータを用いて編年上の画期をいくつか抽出した。また、その地理的変異を考察するにあたり、参照モデルを検討した。特に参考にしたのは、狩猟採集民世界に農耕民が進出した際の文化変化である。そこで、当該分野の研究事例を検討し、B01文化人類学、B02現象数理学と意見交換しつつモデル構築につとめた。 (4)東アジア、中央アジア各地の編年研究の現状をサーベイする国際ワークショップを開催し、予備的成果を公表したほか、海外の先端的研究者と情報交換することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースの設計、文献探査、資料調査、野外調査によるデータ収集、入力、その予備的解析など、予定していた研究項目はほぼ実施することができた。また、アジアの中で最も研究が進展している西アジア地方については、現状の成果をあわせ、約10万から4万年前頃の新人文化形成期の文化パタンを整理し、英文モノグラフにまとめることができた(Nishiaki and Akazawa 2018, Springer)。A01がアジア各地で収集し、現在、A03が測定中の年代測定の結果がでそろってくれば、さらに顕著な成果が整うと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
既に研究は十分、軌道にのっている。このまま、同様の研究をさらに推進する。その際、他の計画研究とも有機的に連携し、研究の融合をはかる。A01の考古科学的研究、A03の年代測定、古環境研究は元来、親和性が高い異分野領域であるが、B01文化人類学、B02現象数理学とも連携する。具体的には、農耕民が狩猟採集民社会に進出したさまを記録した文化人類学データは多々あるため、これを参照しつつ、旧人社会への新人進出の地域的変異が生じた背景をさぐる手がかりとしたい。また、過去二年間の研究を通じて、B02現象数理学から、旧人社会への新人進出モデルとして、生態的進出と文化的進出という二重波モデルが提出されている。これは、本計画研究が構築する地域編年の変異を説明する格好の作業仮説となりうる。二重波モデル説が妥当かどうか、データベース分析を通じて検証していく。
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