計画研究
昨年度から引き続き、アジアに新人が拡散・定着した頃の行動様式に関する考古記録の収集と解析を行った。【遺跡情報の収集】研究標本を収集する主な方法として遺跡調査を継続した。2017年度もヨルダン、モンゴル、インドネシア、北海道における遺跡調査を予定通りに行うことができた。新たな試みとして、新学術領域の他の計画研究班メンバーとの協働を遺跡調査現場でも進め、年代測定や古環境復元の綿密なサンプリングを実施した。逆に、本計画研究のメンバーが他班の調査に参加することも行い、現地調査の相互乗り入れによる連携を促進した。【考古記録の解析】遺跡調査で採取した遺物(石器など)や堆積物の分析も順調に進めた。調査地において整理作業を行ったほか、標本の一部を日本に輸送し詳しい分析も行っている。それを通して、道具製作や資源利用、居住・移動、社会関係といった側面の行動様式に関わるデータを蓄積している。本計画研究による分析は幅を広げ、今年度の新たな取り組みとして、公募研究で加わったタンパク質分析、および博士研究員による歯の同位体分析があげられる。また、新学術領域の他の計画研究班メンバーと協働し、放射性炭素年代測定と光ルミネッセンス年代測定を進めた。遺跡堆積物の分析による古環境の推定も行っている。さらに研究項目B(理論的解析)との連携も進め、国際誌に共著論文を発表した。【博士研究員雇用】博士研究員を今年度から採用した。本計画研究では、動物遺存体や堆積物の同位体分析を行い、古環境や過去の人々の資源利用行動(特に狩猟行動)に関するデータを得る研究を行っている。【研究集会による情報発信】研究発表についてはリストのとおりであるが、本研究計画共同の取組として、国際ワークショップを開催した (Across the Movius Line)。また、一般への成果発信として、名古屋大学博物館において展示と一般講演会を行った。
2: おおむね順調に進展している
遺跡情報の収集計画に関しては、アジアに新人が拡散・定着した時期の考古遺跡(の調査を昨年から継続し、記録の蓄積を行うことができた。海外調査は現地の状況にも左右されるので、それが今年も継続できた機会を最大限に活かし、新たな遺跡や記録を得ることができた。また、研究資料収集の補助的手段として行っている文献探査も着実に進行できている。2017年度は特に、資源利用に関わる考古記録として、東アジア周辺の動物相に関する研究や報告の文献収集を開始し、研究大会で成果発表を行った。「研究実績の概要」記した通り、収集した遺跡資料の分析も、本計画研究メンバーと新学術領域メンバーの共同により着実に進行している。特筆すべきは、研究項目Bのメンバーと共著でTheoretical Population Biology誌に論文を発表したことである(Wakano et al. 2018)。その他、本研究計画班のメンバーがScientific Report, Journal of Human Evolution, Current Anthropology, Quaternary International, Journal of Archaeological Science Reports, Journal of Island and Coastal Archaeologyなどの国際誌や国内誌、書籍に論文発表を数多く行った。また、国際ワークショップと博物館展示、一般講演会など多様な方法で研究成果の発信を行うことができた。そして、これらの成果をまとめた年次報告書の冊子を、新学術領域の出版シリーズ(PaleoAsia Project Series)の一部として刊行した。以上の点から、研究活動から成果発信まで順調に進展していると思われる。
下記の研究活動を予定している。(1)ヨルダン・インドネシア・モンゴル・北海道での遺跡調査、(2) 文献探査による他の遺跡情報の収集、(3) 考古記録を用いた行動解析、(4) 研究計画A03と共同による年代測定や古環境解析、(5) 項目Bとの連携による理論構築、(6) 領域全体の研究大会や国際研究会の主催、(7) 論文や学会等での研究発表、(8) 博士研究員や研究補助員の雇用による若手研究者の育成、(9) 本研究で収集した考古標本を用いた大学院教育。平成30年度は特に、領域全体の国際研究大会(12月)、国際学会でのセッション主催(9月)、博士研究員のドイツ派遣(9~12月)、本計画の研究標本を用いた修士研究と卒業研究の指導(各1名)を予定している。これまで、アジア各地の遺跡調査を通して採取した考古資料の分析を進め、行動様式の推定や年代測定、古環境との対応などについて予備的結果を得ることに成功した。この結果を今後、追加試料の分析等によって確認し、信頼性の高い成果を国際誌等で発表することを計画している。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (20件) (うち国際共著 8件、 査読あり 14件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (15件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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