研究領域 | パレオアジア文化史学ーアジア新人文化形成プロセスの総合的研究 |
研究課題/領域番号 |
16H06409
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
門脇 誠二 名古屋大学, 博物館, 講師 (00571233)
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研究分担者 |
出穂 雅実 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (20552061)
小野 林太郎 東海大学, 海洋学部, 准教授 (40462204)
中沢 祐一 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70637420)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 考古学 / 先史学 / 人類学 / アジア / 人類進化 |
研究実績の概要 |
【遺跡調査】 ヨルダン、モンゴル、インドネシア、北海道における遺跡調査を予定通りに行い、研究課題に直接関わるオリジナルの考古記録の収集を行うことができた。ヨルダンとモンゴルに共通して採取されたInitial Upper Paleolithicの記録は、ヨルダンではホモ・サピエンスの定着(旧人の絶滅)、モンゴルでは拡散初期に相当する貴重なものである。インドネシアでも3万年前近くに遡る記録が得られた。今年度も調査現場において異分野連携を推進し、B01班の文化人類学者がヨルダンの遺跡調査に参加した。 【海外研究】 連携研究者2名が海外研究を行い資料調査や試料分析を行った。中国黒竜江省ハルビン市と大慶市大慶博物館の訪問では、後期更新世後半から最終氷期最盛期(LGM)にかけての動物骨標本を観察した。また国際活動支援予算により、ドイツ、テュービンゲン大学の地球科学分野の研究室において遺跡出土動物遺存体の同位体分析を行った。 【試料分析】 遺跡調査で得られた標本は、班内外の研究者との連携を通して分析が進められた。公募研究として進められているタンパク質分析による動物種の同定は、1万年前よりも新しい標本(新石器時代)については安定した結果が蓄積したため、今年度は3万年前に遡る標本(上部旧石器時代)の分析を開始した。 【成果発信】 ホモ・サピエンスの拡散と定着プロセスに直接関わる考古記録の1つであるInitial Upper Paleolithicの特集号(Archaeological Research in Asia)が分担者の出穂雅実を主体として編集された。また、2018年12月に京都で国際研究会を開催した。 【若手育成】 遺跡調査やシンポジウムへの大学院生の参加、および資料分析を通した学士・修士・博士研究の指導を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査の実施は現地の状況にも左右されるが、今年度も予定通りに遺跡調査を継続し、アジアに新人が拡散・定着した時期の考古記録の蓄積を行うことができた。また今年度は、連携研究者2名も海外(中国とドイツ)において資料調査および分析を行ったのが新たな進展である。それにより、遺跡調査から得られた標本の分析および解釈を促進する成果が得られた。 新学術領域研究において鍵となる異分野連携についても進展することができた。遺跡調査においては、ヨルダンの調査にB01班の文化人類学者が参加した。考古民族学的調査を行うことによって、旧石器時代の居住民の水利用や鳥罠猟に関する知見が得られた。 文化変容に関するモデル化についても、数理モデルの検討を進め、12月の国際研究大会において海外研究者からの意見を仰ぐと共に、モデル改善をめざした議論を行うことができた。 成果発表においても、国際学術誌や国際学会での公表を引き続き行うことができた。そして、これらの成果をまとめた年次報告書の冊子を、新学術領域の出版シリーズ(PaleoAsia Project Series)の一部として今年度も刊行した。 今年度は領域全体の中間評価があり、これまでの進捗状況について総括的な報告を行ったが、その評価はAであった。 以上の点から、研究活動から成果発信まで順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
【遺跡情報の収集】 2016年度から継続しているヨルダン、モンゴル、インドネシア、北海道における調査を今年度も実施する。これまで収集した資料の分析の結果に基づき、確認すべき点や新たな問題点を明確にした上で調査にのぞみ、効率的・戦略的な調査を行う。文献探査についても継続する。その活用としては、遺跡調査によって得られたオリジナル資料の比較対象として用い、論文や学会発表の際に利用する。 【考古記録の解析と成果発表】 これまでと同様に、遺跡調査と文献探査で収集する記録から、(1)道具製作(石器と骨器)、(2)資源利用(陸生・水生資源)、(3)居住・移動(遺跡の立地や分布など)、(4)社会関係(墓・炉・象徴品)の行動に関わるデータを扱い、アジア各地における行動変遷パタンを明らかにする。 これらの行動を復元するための分析はプロジェクト内外の研究者と共同で進める。特に今年度は、第7回研究大会において連携シンポジウム「新人文化の形成過程における石器技術とそのモデル化」を予定しており、特に道具製作行動の変遷パタンをアジア広域で比較すると共に、それを新人拡散と旧人消滅の人口動態と関連づけるモデル化を進める。これまで、アジア各地の遺跡調査を通して採取した考古資料の分析を通して、行動様式の推定や年代測定、古環境との対応などについて研究を進めてきたが、ある程度成果がまとまってきたので、今年度は論文や学会などでの成果発表をより進める。また、これまでと同様、今年度の活動成果をまとめた報告書を作成する。 【成果発表など】 これまでと同様、領域全体の研究大会(年2回)に参加するほか、班会議を開いて収集情報の共有化と研究進行の打ち合わせを随時行う。また、今年度は国際第四紀学連合(於:アイルランド)において、幾つかの成果発表を予定している。博士研究員の雇用や本研究課題の研究を通した若手教育・学生指導も継続する。
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